HEAVEN | ナノ



  学校が終わっていつものように病院へ行くと、聞き慣れた声がした。あ、また抜け出してサッカーしてる。もう、ほんとに何回冬花さんが言っても聞かないんだから。そう思って、声が聞こえる方へ足を進めると小さな男の子達と、同い年くらいの男の子と太陽が目に入る。太陽はその同い年くらいの男の子とサッカーをしていた。




「楽しそうだなぁ」




  何だか邪魔出来ない雰囲気だったので、少し離れたところからその光景を眺めた。心なしか、いつもよりも嬉しそうにサッカーしてるように見える。そういえば太陽はいつも一人でサッカーしてたっけ。私はサッカー出来ないから、ずっと相手がいなかったんだよなぁ。だから相手がいて嬉しいのかも。私の中でサッカーが上手い人ってなったら、お兄ちゃんと太陽が真っ先に浮かぶけど、あの男の子もなかなか上手だ。太陽と張り合っている。チョココロネみたいな髪型してるけど。




「恋季ちゃん?」
「あ、冬花さん」
「どうしたの?こんなところで、」




  あ、やばい。冬花さんに見つかっちゃった。この先に起こる出来事を予想する。あぁ、ほらやっぱり。予想したのとまったく同じシナリオだ。太陽を見つけた冬花さんは、注意の声をかけながら病室に戻るように指示した。注意されたのにも関わらず、太陽はその場から「じゃあね、天馬!」と言って逃げ出した。あれ、天馬?聞き覚えのある名前だ。そうだ、確か前に太陽が嬉しそうに話してた…。




「…松風天馬、」




  あの人がそうだったんだ。確かに上手かったなぁ。冬花さんと話している松風天馬くんを眺めていると、ぱちっと目が合った。わわっ、どうしよう!とりあえず軽い会釈をして、私は逃げた太陽を追いかけに行った。それにしても太陽、幸せそうだったな。病気なんかじゃなかったら、毎日あんな風にサッカーしてたんだろうか。太陽が病気じゃない世界を想像すると、すごく胸が痛んだ。私は動いていた足を止めた。




「神様、太陽をホーリーロードに出させて下さい。」




  世界を変えて下さいなんてことは頼みません。だから、せめて大好きなサッカーをやらせてあげて下さい。こんなことを願ったら、太陽のためみたいに聞こえるけど、違う。私が太陽のあの幸せそうな顔をまた見たいと思ったから、だ。







20120207


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