HEAVEN | ナノ



  恋季が僕がサッカーすることをよく思っていないのはずっと前から気付いていた。すごい悲しい目するから。だから雷門との試合に出ないで、と言われたたきは戸惑ったけど恋季が自分の本心を言ってくれて嬉しいとも思ってしまった。恋季が僕にそう言ったのは普通に心配の気持ちでだと思うけど、何よりお兄さんのこともあったからだと思う。きっとあんな思いをしたくなかったんだろう。
  恋季が悲しむのは嫌だったけど、何より僕はサッカーがしたかった。誰にも邪魔されたくなかったんだ。たとえ恋季にでも。




「恋季はずっと僕のそばにいてくれた。病気の僕のそばに、ずっといてくれた。」
「……」
「感謝はしてるよ。でも、これは僕の人生だ。自分で決める」
「…嫌だよ、太陽」
「何て言われても、誰に止められても、試合には出るから」





  だからキツイ言葉と知りながらもこう言った。恋季はすでに泣きそうな顔をしていたから、僕が病室から出たあときっと泣いてたはずだ。




  試合には負けた。でも全力を出し切ったし、試合の中で誰よりもサッカーを楽しんだ自信があるから後悔なんてしなかった。あえて言うなら、終わったあとに微笑んだ恋季をみて、心配してくれた恋季を悲しませてしまったことに後悔した。次恋季に会ったら心の底からありがとうを言おうと誓った。ごめんね、じゃなくて、ありがとうを。





  試合で体はもちろんクタクタになり、俺は当然のように再び入院となった。早くサッカーがしたい。抜け出そうかなんて考えるけど病室には今冬花さんがいたから不可能だ。




「今度はいつ退院出来るんですか?」
「随分無茶したからね。今回は長いんじゃない?」
「またフィールドに戻るって、天馬と約束したのに、」
「無理言って試合出たんだから、しばらくは絶対安静ですからね!」
「分かってますよ」




  あー暇だなぁ。恋季来ないかな、と扉に視線を変えても開く気配はない。もしかしたら恋季、気まずくて来れないなんて思ってるのかも。悪いことしたなぁーって枕に顔を埋める。キリキリ。心臓が痛んでくる。キリキリ。あれ、何だろうこれは。




「あっ、は、くっ…っ」
「太陽くん!?」




  だんだん意識が遠のいていく中、待ち望んでいた扉が開く音が聞こえた。看護師さん達が騒いでいる足音とまじって、ずっと聞きたかった声で慌てて俺の名前が呼ばれる。




「太陽?どうしたの!大丈夫!?」
「…はっ、恋季…っ」
「喋らないで!」
「…、きい、て…っ恋季」
「太陽!」
「天国、見つけた、よ…」
「…え?」
「恋季がいる、この世界が、天国、だ…っ」
「私がいる世界?」
「う、ん…。俺の、天国は…恋季の、隣に、あったみた、い…」
「たい、よう…」
「恋季…っ」




ありがとう





  最期に見たのが恋季の涙で濡れたくしゃくしゃな顔だなんて、でも伝えることは伝えれたからもう何も求めないよ。恋季、俺はすごい幸せだったよ。







20120212

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