Let's! | ナノ



数学の授業中。前の授業でやった小テストの結果をみて、眠たいなーと思ってた感情は吹き飛んだ。こ、これはまずい…!現実逃避したくても私の目にしっかり焼きついた点数がさしてくれない。




「…部活忙しかったからね!」




それでも何とか逃げたくて、大丈夫大丈夫と自分に暗示をかける。次頑張ればいいんだ、と前向きに考えてると、隣の席であるいじめっ子の狩屋くんの声が聞こえた。




「うわ、何だよその点数…」
「かっ狩屋くん!」
「今までバカって言ってきたけど、神崎って本物のバカだったんだな」
「う、うるさい!それに勝手に見るな!」
「見たんじゃなくて見えたんだっつーの。勘違いすんな」




反抗するように狩屋くんのバカ!とそう言う。すると、いやお前の方がバカだろ、とけっこう真剣な顔で言われた。わ、ちょっと傷ついたかも。




「だいたい、狩屋くんは何点なの?」




これで私より低かったら本気でバカにしてやる。ま、この点数より低い人なんてそうそういないだろうけど…。「教えなーい」そう言って前に体を向ける狩屋くんに、不公平だよ!と言葉を投げかける。どうしても点数を知りたいと思い、机に堂々と広げられている狩屋くんのテストを見た。あ、普通に見えた。「えええ!?」見えた点数の高さについ声が出てしまった。狩屋くんは突然大声を出した私にびっくりしたのか、肩を揺らす。




「か、狩屋くん頭いいんだね…」
「なっ!勝手に見てんじゃねぇよ!」
「見たんじゃなくて見えたんでーす。勘違いしないでね」




まぁ、私の場合は意図的に見たから嘘なんだけど。「でも凄いね、ちょっと尊敬」「神崎に尊敬されても嬉しくねーけど」素直に褒めたのにこの男は…!相変わらず可愛くない。と心の中でぐちぐち文句をこぼす。




「まぁ、あれだな…」
「何?」
「どうしてもって言うなら、数学教えてあげないこともないけど」
「え!本当に!?」
「…なんて言うかよ」
「…え」
「バーカ」




憎たらしい笑顔でそう言う狩屋くんを私は睨む。狩屋くんもいいところあるんだ、と思った数秒前の私はもういない。教室には「狩屋くん!」と私の怒鳴り声が響いた。




音がわたしを追い越した







20120129