「神崎が好きなんだよっ!」
頭の中でこだまするその言葉に息を呑んだ。え、え、え。心臓がよりいっそう早くなる。このままじゃドキドキのしすぎで私死んじゃう!「好き?誰が、誰を?」バクバクしている胸を抑えながら聞いてみる。狩屋くんはまだ言わす気か、と顔を真っ赤に染める。
「だーかーらっ!神崎のことが好きなんだっつーの!」
「え、え、え、えええ!?」
負けじと私も顔をさらに赤くする。狩屋くんが、私を、好き。心の中で復唱したけどこれは現実かと疑った。「…で?」と聞いてくる狩屋くん。で?って…。こういうのは苦手だから、逃げたいの一心だったけどそうにもいかない。なにより、私はこの胸の音の正体を知っている。「あのね、」さぁここから「私もね、」新しい時間が「狩屋くんが」動き出す「好きみたい。」
「…まじですか?」
「まじなんです。」
「なーんて冗談だっつーの。とか言わないよな?」
「言わないよ」
「本当に本当だよな?」
「本当の本当の本当」
「俺のこと騙してるんじゃ」
「どんなけ疑ってるの!」
やたらと疑ってくる狩屋くんに思わずつっこんだ。そんなに信用がないのか私は。むすっとした顔をすると、瞬間何かに包まれた。何かって、狩屋くんしかいないんだけど。
「かっ、狩屋く」
「本当に俺でいいのか?」
「え?」
「俺、性格悪いし口も悪いぜ?」
「…そんなこと、ずーっと前から知ってるよ」
「全然素直じゃないし…」
「確かにそうだねぇ」
「すっげぇ猫かぶりだし、」
「うんうん。でも、それが狩屋くんでしょ?」
「口悪くて素直じゃなくて、猫かぶりだけど優しい狩屋くんが大好きだよ。」
背中を腕をまわした。狩屋くんに心臓の音が聞こえてしまうか不安だったけど、少し見える狩屋くんの顔がまだ赤かったから同じくらいドキドキしてるんだなぁと安心した。
「嫌味にしか聴こえねぇけど…」
「ごめんね、私は素直だから」
「うるせぇ」
頭を叩かれた。触れられたところが愛しく思えるだなんて、私相当だなぁ。いつからこんなに狩屋くんのこと好きになっていたんだろう。
「俺のそばからいなくなったりしないよな?」
「狩屋くんがいなくならないなら」
「なんだよそれ。まぁでも、意地でも離さねぇけど」
更に力を込めて抱きしめてくる狩屋くんの髪の毛をくすぐるように触れる。柔らかい髪の毛と伝わってくる体温が心地よくて、私はそっと目を閉じた。私、幸せだなぁ。お日さまの光で和やかな気分になっていると、真横から声が届いてきた。答えるように狩屋くんの背中にまわしている手をギュッと強くした。「私も、」
「大好きだよ。」
未来へ続く果てしない時間を、君と刻みだした。
Let's tick away time with me!
20120311 …end.