Let's! | ナノ

お日さま園に入った時から、俺は成長していないのかもしれない。いつまでも子供で、何に対しても投げやりで。人を信じないってことは、子供とは違うのだろうけど。俺の中の時間、きっと止まってるんだろうなぁ。 





表の俺は人当たりがよくて、いい雰囲気を出している。でもそれは猫がぶりにすぎなくて、表があるなら裏もある。裏の俺は根性曲がってて最悪な奴だ。きっと裏が本当の俺なんだろうけど。そんな裏の自分が出せるようになったのは雷門に来てからだ。最初は気に食わなかった霧野先輩だけにちょっかいをかけていってたが、それも変わっていった。変なストレスも抱えなくてけっこう充実した生活を送っていて、始めて学校が楽しいだなんて思った。中でも神崎をいじめるのが日課みたいなもんで、毎日毎日懲りずにいろいろしてやった。神崎は反抗はするものの、俺のことを気にかけてくれた。そんな神崎の優しさに、慣れないなぁとこしょばい気持ちを持ち始めてけっこう経ったことだった。




「狩屋くんは家族がいないから分からないんだよ!」




今までの罰が当たったのかと思った。バカで弱虫な俺は神崎に重荷を背負わすような言葉を言って逃げるように部室から出た。グランドへ行く途中に霧野先輩とキャプテンに会ったけど、頭を下げただけだったから後で礼儀がないとかどうとかで霧野先輩に怒られるんだろうなぁ。とさらに憂鬱になりつつグランドへ向かった。
サッカーボールを蹴ってみてもこの気持ちは晴れなかった。はぁ、と自然界と一つため息が出た。ため息ついたら幸せが逃げていくなんてのは嘘であってほしい。もう帰ってしまおうかとも考えたけど試合も近いし、何より着替えるためには部室に行かなくちゃいけないのでやめた。部室には神崎がいる。それに天馬くん達もいたから、きっと気を遣われる。怖くて避けてしまうだなんてかっこ悪りぃの。明日からどうするんだよ。何気なく蹴ったボールが全然違う方向へ飛んでいったのが、どこか今の俺に重なった。














次の日。目の前には緊張気味の神崎が肩を震わせている。どうしてか俺まで緊張してきた。




「話したいことがあるの!」




少し成長出来るような気がする。










きみを繋ぐ術を知っている






20120307