Let's! | ナノ

「私は、狩屋くんの親の代わりなんてなれないけど、」




「でも、それでも、一緒にいることくらいは出来るから、」




「私に出来ることなら何でもするから、だから」




「そんなに悲しそうに笑わないで」






私はただ綺麗事を言っていただけなのかもしれない。綺麗なセリフだけを並べて、本当どうしようもない。結局は狩屋くんを傷付けた。言われる気持ちなんて考えもせず、一時の感情に流されて。あの時の狩屋くんの顔が忘れられない。すごく悲しそうな顔してた。今にも泣き出しそうだった。そんな顔にさせたのは、他の誰でもないこの私だ。
どうしてか狩屋くんに意地悪されていたのが凄く懐かしくかんじる。そんなに前のことなんかじゃないのになぁ。まだ新しいことのはずなのに。明日になったらいつものいたずらっ子な狩屋くんになってないかな。と思う私はさぞかし自分勝手だ。




「お前は俺のこと、分かってくれてると思ってた」




頭に響くいつもよりも少し低くなった狩屋くんの声。分かっていたなんて表現は可笑しいかもしれない。そんなことは関係ないと思っていたの方が正しい気がする。お日さま園っていう普通とは違ったところで生きていても、狩屋くんは狩屋くんでしょ。そう考えて狩屋くんと接していた。それのなのに、それなのに。私は狩屋くんを否定したんだ。










謝らなくちゃ。もしかしたら許してもらえないかもしれない。許してくれても、もう私とは関わってくれないかもしれない。それでも、狩屋くんの心を少しでも軽くしなくちゃ。だから真っすぐ狩屋くんの目を見て言おう。ごめんなさいって。そらされてしまうかもしれない。私の目を見てくれないかもしれない。でも私は伝えなくちゃ。
よし、と気合いを入れて手に持っていた二つの内の一つの飴を口に入れた。甘くて美味しい。そしてもう一つは制服のポケットの中に入れた。前に狩屋くんにあげたイチゴ味の飴だ。この飴が口の中で溶けてなくなったら狩屋くんを探しに行こう、と甘く広がる味を感じつつそう決心した。









未来で今を縛らないで






20120307