Let's! | ナノ

なんとかあのプリントの山も無くなり家へ帰ることが出来た。真っ暗な夜道は正直怖かったけど、途中まで狩屋くんと一緒だったしバイバイしたあと全速力で家まで走ったので何事もなかった。狩屋くんがぶっきらぼうに送ってくって言ってくれたけど、抱きしめちゃったり泣いちゃったりで恥ずかしかったのか断った。それは狩屋くんも同じだったみたいで、それ以上は何も言わずそれぞれの帰宅路へ別れていった。
家に着いても恥ずかしい気持ちは取れず、ご飯食べてお風呂入ってベットの中で一人悶々としていた。気付けば朝になってたけど。おはよう、とみんなに挨拶しながら教室に入れば狩屋くんが目に映る。ダメだ、また恥ずかしくなってきた。




「お、おはよう、狩屋くん」
「…おぅ」
「きっ昨日は大変だったね」
「そうだな…」
「終わってよかったね、」
「あぁ…」




何この感じ。どうして狩屋くんとこんな気まずい雰囲気で話さないといけないの!内心そう思っても昨日のことを思い出し、しどろもどろな会話になる。昨日のこと消えろ!頭にそう命令してももちろん消えるわけなかった。一回大きく息を吸って、吐こうとした時だった。




「神崎」
「っ、んん!?」
「うわ、何だよ!」
「狩屋、くんが、いきなり、話しかける、から…っ」




突如呼ばれた名前に息をつまらせた。さっきまでとは違った恥ずかしさを覚える。ああもう今日はダメだ。朝に見忘れた星占い絶対最下位だったんだろうな。




「で、何?」
「昨日どうだった?」
「きっ昨日てなに!!!」
「は?いやだから、怒られなかったのかって…」
「あ、あぁ、なるほど。ちょっとだけ怒られちゃった」
「ふーん、」
「携帯忘れた自分が悪いんだけどね」
「その通り」
「う、る、さ、い!」
「…あとさ、神崎」
「なにさ」




周りをキョロキョロと確認したあと、顔を私へ近づけてきた。いつもよりも少しトーンの落とした小さい声で、狩屋くんは話す。




「昨日のことは秘密だからな!」
「…え、」
「あんな恥ずかしいこと、誰かに知られたら…」
「知られたら?」
「絶対からかわれる。特に霧野先輩あたりに。」
「あー、はいはい。」
「誰にも話すなよ!絶対!」
「う、うん。私も話したくないし…。てゆーか」




昨日のこと思い出させないでよ!そう叫ぶ。だって、だってだってだって。いつもみたいに話せてると思った途端にこれだ。また蘇って恥ずかしくなったじゃんか。




「俺だって恥ずかしいっつーの!」
「じゃあ何でぶり返すの!」
「口止めの為だろ!」
「元から言う気なかったよ!」
「神崎が言う気なかったとか、分かるわけねぇだろ!」
「分かってよ!」
「お前は俺にエスパーにでもなれって言うのか!」




狩屋くんは怒った顔をしてるけど、なにしろ顔が赤いから迫力はまったくない。それは私も同じだろうけど。顔を隠そうと机に疼くまれば、冷たい感じが気持ちよかった。もう知らねーという狩屋くんの声を無視しながら、私が考えるのはここ最近なんだかおかしい自分のことだった。




素敵の詰め合わせ







20120211