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ここまできたら何か縁あるのかな?と思ってしまう。だってそうでしょ。まさかクラスで二人しか当たらないくじを狩屋くんと取るなんて。いや、当たるなんていいもんじゃない、むしろ外れだ。なんてったって雑用の仕事のくじだったんだから。赤い印のついた紙を見ながら、心底嫌そうな表情を狩屋くんはみせる。まぁ私も同じような表情してるんだろうけど。




「私ってこんなにくじ運よかったんだ…」
「いや逆だろ悪いんだろ」
「しかも狩屋くんとだなんて…。ほんとこのくじ引いた自分が憎い」
「お前は俺に殴られたいようだなこの野郎」




右手で拳を作ってみせる狩屋くんをスルーして、先生から渡されたプリントの山が乗っかっている机の椅子につく。あー今日はもう部活行けないじゃんこんなの。あ、それは狩屋くんも一緒か。先生も鬼だなぁってつくづく思う。このプリントを学年全員分の冊子にしろだなんてそんな無茶な。しかも今日中。




「終わる気しない」
「初めて神崎と意見があった」
「でもやらなきゃ終わらないか…。はい、ホッチキス」




二つ用意してあったホッチキスの片方を狩屋くんに渡す。隣で狩屋くんは、部活行きてぇだのめんどくせぇだのぐちぐち文句をこぼしている。この雑用の仕事を全部私に押し付けて、部活行っちゃったりしないよね…。いやさすがの狩屋くんでもそんなことはしないか、うん。




「地味な作業だね、これ」
「お、神崎この作業すっごく似合うな」
「これっぽっちも嬉しくないけどありがとう」




十冊目を止め終えた。これ本当に終わるの?時間のこと考えてないでしょ先生。時間に限りがあること知ってますか先生。窓へ視線を移すと、サッカーしている風景が映る。いいなぁ、私もサッカーしたいなぁ。選手じゃなくてマネージャーだけど。サッカー出来ないけど。




「このプリント全て燃やしたい」
「火事が一番罪重いんだぞ」
「二人でだったら少し軽くなったりしないかな?」
「ないだろ。つーか俺を巻き込むんじゃねぇ」
「じゃあ手っ取り早く、これ全部破ろっか!」
「全然手っ取り早くねぇし。お前どうかしてるぞ」
「うるさい」




足を伸ばして狩屋くんを蹴ってやった。痛え!と狩屋くんが言う。ふん、どうだ。べーっと舌を出して挑発したら蹴り返された。いやダメだよ反則だよ。狩屋くんサッカー部なんだから、私の蹴りの三発分くらいあるでしょう。てことでプラス二発蹴り返した。狩屋くんもムキになって蹴り返してくる。足を動かすより手を動かせよ。きっとこの光景を見た人はそう思うだろうなぁ。あぁでも、確かに私はどうかしてるのかもしれない。この雑用をする相手が狩屋くんだと分かったとき、狩屋くんでよかったとそう思った私は本当にどうかしてる。




モノクロ世界に身を投げた







20120207