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お見舞いに行った次の日、狩屋くんはいつも通り学校に来た。マスクしてるのでまだ本調子ではないみたいだけど、元気になったっぽいので安心だ。




「もう大丈夫なの?」
「すっかり」
「マスクしてるけど、」
「念のためってやつだよ」
「でもまだ安静にしてなきゃダメだよ」
「余計なお世話」
「ちゃんと風邪薬のんだ?」
「……」
「しんどくなったらすぐに保健室に…」
「お前俺のお母さんか!」




たくっ、と言って呆れたように狩屋くんがひじを組んだ。ちょっと心配しすぎたかな、とそんな狩屋くんを見ながら思っていると、ふとあることを思い出した。


そういえば狩屋くん、お母さんもお父さんもいないんだっけ。




お日さま園にあずけられても、確か誰とも関わろうとしなかったんだよなぁ。言い方ひどいかもしれないけど、それでこんな風になっちゃったのか。そう考えると、狩屋くんと言い合いできるのって凄いことなんだよね。自惚れかもしれないけど、あたしに…ていうかサッカー部には心を許してくれてるのかな。




「…狩屋くん、」
「んー?」
「狩屋くんには仲間がいっぱいいるからね!」
「は?何だよいきなり…。気持ち悪りい」
「あたしもいるし、天馬くんも信助くんも葵ちゃんも!」
「…はぁ」
「剣城くんに影山くんも!」
「……」
「それに霧野先輩もキャプテ」
「全員の名前言うつもりかよ!」




もういいわ!とまるで漫才のツッコミのように狩屋くんがいう。今日の狩屋くんツッコんでばっかだなぁ。「神崎が変なことばっか言うからだろ!」おっと、口に出してしまってたみたいだ。




「でもよかったな、」
「何がだよ」
「狩屋くんが今日学校来てくれて!」
「…いつも俺に怒鳴ってるくせに」
「や、だからそれがだよ!」
「はあ?」
「狩屋くんと一日一回言い合いしないと、調子狂っちゃう」 
「……」
「狩屋くん?」
「…変な奴、」




そう言って狩屋くんは顔を背けて視線を空にずらした。あれ、もしかして照れてる?と問いかけて見れば「神崎の意味不明な会話に疲れただけだっつーの!」顔が若干赤いから説得力ないけど、まぁそういうことにしてあげとこう。狩屋くんにも可愛いとこあるんだな、と気付いたある日のことだった。




流れる星のゆく先







20120130