「円堂くんはヒーローみたい!」
突然そんな言われたら、誰だって何て返したらいいのか分からなくなるはずだ。ニコニコ、と効果音が付きそうなくらい満面の笑顔の苗字を見ていたら、余計返答に困った。
「俺がヒーロー?」
「うん!みんなを助ける頼りになるヒーロー!」
大抵人から言われるのはサッカー馬鹿だったから、ヒーローみたい何て言われて少し恥ずかしくなった。ヒーローといえば、困ってる人を助けて、ハッピーエンドへと導いていく人だ。俺は到底自分はそんなすごい人だなんて思えなかった。
「俺よりも、豪炎寺とかの方がヒーローっぽくないか?」
「うーん。豪炎寺くんもすごいよ?エースストライカーだし!」
「だろ?」
「でも私の中では円堂くんの方がしっくりくるんだよね」
何でそう思うんだろ、と顎に手をあてて考えだした苗字。答えがどうであれ、正直ヒーローみたいって言われたのは嬉しかった。てゆーか悪い気になる人はいないと思う。しかも、言った相手が自分が想いをよせている相手なら特に。自分がヒーローだなんて思ってないけど、思ったことないけど、やっぱり苗字に言われたから、それはかなりの幸せだった。
「あ、分かった!」
考えごとをしていた顔から、笑顔にぱっと変わって苗字は俺のことを真っすぐな瞳でみた。
「私が私のヒーローは円堂くんがいいと思ってるからだ!」
その笑顔には、その言葉には、何か裏があるのかと思ってしまうほど、さらりと苗字は言った。それは一体どういう意味なんだ、と聞けない俺はきっとバカなんだろう。納得した様子でやっぱりヒーローは円堂くんだ!と言っている苗字の横で、俺はただただ顔を真っ赤に染めた。じゃあヒロインは苗字で。なんてセリフ、今の俺には心の中で言うだけで限界だった。
---------------
円堂はヒーローだよね
20120103