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「泣かないで」




  涙で濡れた私の顔を、そっと一之瀬くんの優しい手が触れた。今まで、数えきれないくらい私はこの手と繋ぎあったのだろうか。目をつむって真っ暗になった視界の中で、思い出だけが輝いていた。




「この先に何があるのか、見てみたいんだ」
「…っ、」
「俺、頑張るから」



  初めて一之瀬くんの言葉を聞きたくないと思った。あんなに好きだった彼の声なのに、頭の中に響くごとに悲しい気持ちはどんどん大きくなってきた。




「…好き、」
「うん」
「一之瀬くんが、大好き…」
「俺も名前が大好き」




  生まれて初めてこんなに誰かを好きになった。生まれて初めて別れがこんなに悲しいことだと分かった。
  今の私に出来る精いっぱいのことは、笑顔のまんまで手を振ること。頭ではわかってる。いくら泣いても一之瀬くんは行ってしまう。泣くことは彼を困らせてしまうだけなのに。




「…私達、ずっと一緒にいたよね」
「うん、楽しかった」
「………」
「……名前、」
「…っ、何?」
「忘れない。絶対に名前のこと忘れない」




  きっと一之瀬くんと過ごしたあの日々が、何よりも愛しくなるだろう。きっと一之瀬くんのことが、何よりも愛しくなるだろう。




「名前、」
「……」
「またこの場所で会おう」




  太陽みたいな彼の笑顔が、涙で滲んでみえた。日が昇って日が沈んで、また日が昇って。これから繰り返される時の中で、私はどれだけ一之瀬くんを思うのだろうか。きっと今日のように涙することもあるのだろう。でも、それでも、私達の恋は決して終わることないから。




「「またね!」」




  サヨナラは言わなかった。悲しい別れじゃないから。未来のための別れだから。


  僕らはまた繋がれるから。









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HORIZONて曲から!
さよならじゃなくて、またね!


20120104



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