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「士郎くんて、あんまり好きって言わないよね」




  以外、と表情を変えずそう言えば、きょとんとした可愛らしい顔で目をぱちぱちさせていた。「言ってほしいの?」ふにゃと笑った士郎くんに、心臓がうるさくなったのを感じた。最初の頃、私は士郎くんは好きとか愛してるとか、恥ずかしいセリフを何ともなく言える人だとおもっていた。でも、それはまったくの勘違いだった。いや、別に毎日言ってほしい何てそんなことは言わないけど、せめてもの愛情表現として一言好きってだけでもいいから言ってほしいと思う私がいた。




「嫌なんだよねー」
「え、何が?」
「あんまり使いすぎると、言葉の重みがなくなっちゃうでしょ?」




  想像してみた。毎日毎日士郎くんに好き好きと言われている自分を。「…確かに本気なのか不安になるね」「でしょ?」ほら、という得意気な顔をされた。士郎くんなりの考えだったんだな、とほんのちょっと士郎くんのことを理解できたような気がした。




「でも、名前ちゃんがどうしても言ってほしいなら言うけどね」
「うーん…。やっぱいいや」
「あれ、いいんだ」
「士郎くんが私のこと好きだなって感じたときに言うだけで十分だよ」
「………」




  冒頭のセリフを言ったときにした顔を、再び士郎くんがした。あれ、私なんか変なこと言ったかな?士郎くんと一直線に見つめ合いながら考えていると、何言ってるの、と士郎くんが言い出した。




「思ったときに言うんだったら、毎日両手じゃ足りないくらい言ってるよ」




  かぁっと顔が真っ赤に染まっていくのが分かった。恥ずかしくて士郎くんに背中を向ければ、後ろから抱きしめられて、「また思っちゃった」と言われて私の顔はさらに赤くなっていく一方だ。









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吹雪は大切にしてくれる


20120103


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テーマ「人外ファンタジー」
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