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「豪炎寺くーん」
「……」
「ねぇ豪炎寺くんってば〜」




  今日の豪炎寺くんはおかしい。さっきから何回豪炎寺くんと呼んでも、まったく反応してくれない。いや、反応してくれないと言うより意地でも私の方を見ようとしない。私が豪炎寺くんの右側へ行けば左に顔を向け、左側に行けば右に顔を向けられる。




「ちょっと豪炎寺くんってば!」




  何回も繰り返される行為に苛立ちを覚えた私は少しきつめに呼びかけた。でも、それでも豪炎寺くんは私と会話をしようとしない。さすがに、これは本当におかしいと思ったので、原因をきいてみることにした。




「豪炎寺くん、私何かした?」
「……」
「言ってくれないとわからないよ」




  しばらく続く沈黙。じっと豪炎寺くんを見ていると、豪炎寺くんが少し顔を動かして、私の方をやっと向いてくれた。




「最初からずっと、不満があった」
「私に?」
「ああ」




  不満という言葉にびっくりした。きっと豪炎寺くんはこれからその不満について話しをするんだろう。さっきは言ってくれないと分からない。何て言ったが、今になっては言わなくていい、聞きたくないと矛盾している私がいた。もやもやしていると、豪炎寺くんがボソッとつぶやいた。




「……名前」
「え?」
「……名前がいい」




  その言葉だけじゃ何のことか分からず、考えていると再び豪炎寺くんが話しを続けた。




「俺は名前のこと、名前で呼ぶだろ?」
「うん」
「でも名前は俺のこと、豪炎寺って苗字で呼ぶ。それが嫌なんだ」




  頬を少し赤くしてそう言うもんだから、私もつられて赤くなってしまった。何て返そうか頭の中で言葉を一生懸命探していると、赤いままの豪炎寺くんが私の目をはっきり見た。




「…名前で呼んでほしい」




  自分の願望何てめったに言わない豪炎寺くんが、確かにそう言った。照れ隠しで私から顔をそむけたのを見て、自然と笑けてきた。




「大好きな人からのお願いだから、きくしかないよね」
「……」
「大好きだよ、修也くん」




  少し恥ずかしいと思いつつそう言ったあと、微笑みながら振り向くのを待っていたら、頭に手をおかれ、私のことを真っすぐ見ながら「それでいい」とまだ赤いままの顔でそう言った。










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修也よりも豪炎寺の方が
しっくりくる

20120103



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