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  肩に違和感を感じて後ろ振り向けば、口角を少し上げてまるで待ちわびていたかのように俺を見てきた。お互い口は開けず、周りからみたら不思議な空気が流れているようだけれど、俺は名前が言いたいことがテレパシーのように分かっていた。「おめでとう」丁度いいテンポの声で言われて俺はやっぱり、と心の中でほくそ笑む。




「よく頑張りました」
「…子供扱いかよ」




  肩に置いていた手を頭に移動させて、まるで子供をなだめるみたいに俺の頭を撫でだした。不満気に言った俺に対し、まったく気にしてない名前は変わらず頭を撫でてくる。子供扱いすんな、と口は文句しか言わないが、撫でられる感触と窓から差してくる日の光が心地よくてあったかくなってきた。




「あ、そうだ。マサキ」
「ん?」
「きいてほしいお願いがあるの…」




  お願い?首を傾げて聞いてみたら名前は首を縦にふる。珍しいな、と思いつつも滅多にそんなこと言わないから出来ることならきいてあげたい。そんな思いで分かったと言えば、ぱあっと一気に顔を明るくさせて日の光に負けないくらいの笑顔をする。たったそれだけなのにすごく微笑ましくて、これは何としてもお願いをきいてあげたいと思った。




「あのね、サッカーが一段落?したからね…」
「ああ」
「マサキといる時間、少しでいいから増やしたいなぁ…なんて…」




  頬をピンク色に染めて恥ずかしながらそう言う名前に、つられるように俺も赤くなる。こういうのは言われ慣れてないのと、名前からそんなことを言われるだなんて予想だにしてなかったわで上手く言葉を発せない。あだのいだの、伝えるにしては不十分すぎる言葉しか出てこない。しまいには「ダメかな?」なんて聞いてくるもんだから、俺はどうしたらいいのか混乱した頭でぐるぐる考えた。




「ダメじゃなくて、びっくりしたっつーか、」
「マサキ?」
「…あーもう!」




  さっきとは違って今度は俺が名前の頭を撫でた。そうしたら名前はまだ過ごしやすい赤い顔のまま首を傾げる。うわぁなんかデジャヴ。とその光景に思っていると、より一層きょとんとした顔をする名前。




「…かまってやる。」




  ぶっきらぼうに言葉を放ってしまったのに、名前はやったと俺の目の前で喜ぶ。そんな名前を見ていたら、自然と口が緩んでくる。当分は名前に時間をあげるかな、とふわふわの髪を撫でながら決めたある昼下がりのことだった。









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優勝おめでとう!


20120322


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テーマ「人外ファンタジー」
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