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「びっくりさせていいか?」




  不意にそう言った豪炎寺くんに「はい?」となんとも愛想のない返事をしてしまった。豪炎寺くんの漆黒の瞳は容赦なく私を見つめる。びっくりさせる?私を?マジックでもしてくれるのかな。その握られた手が開いたらそこに花があるとか?うわぁすごい。すごいよ豪炎寺くん!ごめんなさいそれくらいしかリアクション出来ません私は。サプライズって苦手なんだよなぁ。どんなリアクションをしたらいいのか分からないんだもん。




「び、びっくりとは…?」
「その言葉の通りだ。」
「どういう系?」
「当ててみてくれ」




  言われたとおりに考えてみる。もちろんいろんな場合を想定して、その時の私がするべき反応も一緒に。豪炎寺くんのことだからレベル高そうだな…。もしかして楽しい感じじゃなくて、本当にびっくりするようなことなのかもしれない。例えば、




「て、転校する…?」
「転校してほしいのか?」
「滅相もない!」




  両手をブンブンと振って全力で否定した。転校してほしいだなんて、いくらなんでもそこまで最低な人間じゃない。豪炎寺くんが転校だなんてしたら、一体何人の人が悲しむことか。そこに私も含めて。




「新しい必殺技が出来た?」
「残念だが違う」
「…んー、私に関係あるの?」
「大アリだ。」




  え、と一瞬固まる。まさか私に関係があるなんて思わないじゃんか。何だろ、誰かが私の悪口言ってた?いやいや、本当にそうでも豪炎寺くんはわざわざそんなこと私に言わないだろう。それにそうだったら私どうしたらいいの。まったく何か分からなくてしばらくの沈黙が続く。分からない。真剣に分からない。そんな私に見兼ねたのか、豪炎寺くんが口を開く。




「分からないようだな」
「…まったく。」
「もう言うぞ」
「え、うっ、うん」




  当てたかったなぁと内心思いつつ豪炎寺くんの正面を向く。どうか明るい会話に繋がることでありますように…!




「俺は苗字が好きなんだ」
「………え、」
「びっくりしたか?」
「………すごく」




  全然思いもしなかった答えに、私はまた固まる。その答えのリアクション、考えてないよ。じわじわとくる熱さと共に言った私の本当の気持ちに、豪炎寺は微笑んだのであった。









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豪炎寺おつかれさま!


20120315


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テーマ「人外ファンタジー」
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