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  すやすや、と和やかに寝ている剣城くんをまじまじと見つめる。これって端から見たら怪しい人じゃないか私。でも勘違いしないでいただきたい。今日の部室の鍵当番だった私は最後に鍵を閉めようと部室に入った。で、そこにいたのが今こうやって寝ている剣城くん。普段クールな剣城くんがこんな子供っぽい寝顔でいたもんだから起こすに起こせなかった。ていうか可愛い。剣城くんもこんな顔するんだ、と思ったところで気付く。やばい私気持ち悪い。こんなの他の人がしてたらどん引きしちゃう。




「剣城くーん。もう部室閉めちゃうよー。」




  ほったらかしになんて出来ないので、もったいないけど起こそうと体を揺すってみる。剣城くんの髪の毛が体と同じリズムで揺れる。柔らかそうな髪だなぁ。そう思ったせいなのか、無意識に剣城くんの髪の毛に触れていた。うわ、想像以上に柔らかい。「……ん、」寝ていても違和感があったのか、剣城くんが顔の向きを変えた。それに反応して私はすごいスピードで髪の毛を触っていた手を引っ込めた。あ、危ない…!ここで剣城くんが目を覚ましでもしたら、きっと私は明日から警戒された目で見られる。それは悲しすぎる。




「剣城くん目覚まして、」
「…んー」




  んー、だって可愛い!男の子に、しかも同級生に可愛いだなんて可笑しいけど初めて見る剣城くんに心の底から思った。可愛いって。起きてるときにこれ言ったら怒るだろうなぁ。もう一度体を揺すると、剣城くんはゆっくりとキリッとした目を開けていった。




「あ、おはよう剣城くん」
「……」
「剣城くん?」
「…苗字?」




  寝ぼけているのかいつもより目が開いてない。「何で苗字がここに…」その問いに鍵当番だからと答える。なるほどといった表情を見せて、目をこすっていた。寝起きだからか何だか子供っぽいなぁ。




「ぐっすり寝てたね」
「……っ!」
「何回か起こしても起きなかったし…」




  だんだんと顔が赤くなっていく剣城くん。ここで寝顔可愛かったって言ったらどうなるんだろうか。多分もっと顔が真っ赤になると思う。




「鍵だけ置いて帰ればよかったじゃねぇか…」
「剣城くんほっとく訳にもいかないじゃん」
「もう外真っ暗だぞ…」
「大丈夫大丈夫。家近いし」
「そういう問題じゃねぇ」
「でも、そろそろ帰ろっか」




  しゃがんでいた体を立たせて鞄を持った。ほら、閉めるよ。と剣城くんに言うと私と同じように立ち上がり、鞄を持ってドアへ向かう。忘れ物がないか確認したあと電気を消せば外みたいに真っ暗なる。ドアを閉めて鍵をかければこれで私の役目は終わりだ。
  門までの短い距離を剣城くんと他愛もない会話をしながら歩いてった。今日の部活のことだとか、授業中に天馬くんが寝ていたこととか。




「じゃあまたね、剣城くん」
「……送ってく。」
「…え?」




  門について私と剣城くんは反対方向だから、またねって言ったのに剣城くんは私の家の方に歩き出す。状況がのみ込めず戸惑っていると、早くついて来いと言われた。え、え、え。一体どういう…。




「いいよわざわざ!」
「俺が寝てたから帰るの遅くなったのもあるだろ。」
「でもそこまでだし…」
「いいから気にすんな。」




  決して私の方へ顔は向けないけれど、剣城くんの顔がちょっと赤くなっていることは知ってる。男の子に送ってもらうのなんて初めてだ…!つられるように私の顔も赤くなった。さっきまで普通に話してたのに、どうしてか今はドキドキして上手く話せない。「あっ、ありがとう」「…別に、」
  鍵当番に当たっててよかったと心の中でこっそり思ったのは、剣城くんには内緒だ。









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剣城くん絶対いい人


20120307


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