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「おつかれさま、雪村くん」




  午前の練習を終え、ベンチへ行くと暖かいお茶を名前が出してくれる。名前は白恋中サッカー部のマネージャー。俺以外の選手の奴らは雪が積もってるからどうのこうので、練習にはまったく参加していない。なので俺と名前と二人だけでいつも極寒の中練習していた。でも最近はちょっと違っていて、吹雪さんがやって来てくれた。吹雪さんはサッカーを教えてくれて、俺もすごく尊敬している人だ。それは名前も同じで吹雪さんを慕っている。「吹雪さんもどうぞ」「ありがとう」ずっと練習に付き合ってくれる吹雪さんにもちろん感謝の気持ちでいっぱいだけど、名前と二人になれる時間がめっきり減ってしまったのでそこのところはちょっとだけ残念だ。ちょーっとだけ。




「あ、タオル忘れちゃった!とってくるね」




  慌てて部室へと走り出す名前の背中にドジと言えば、振り向きざまにうるさいと言われた。まだ見える名前の後ろ姿を見ていると、吹雪さんがやけにニヤニヤしている。何ですかその顔。そう尋ねれば「雪村も青春満喫中かー」と返ってきた。この雪景色に似合わないくらい顔が赤く染まっていくのが分かった。




「そっ、そんなんじゃありませんって!」
「素直じゃないな、雪村は」
「吹雪さんの勘違いです!」
「その真っ赤な顔が何よりの証拠だよ」




  この人本当に大人か。絶対楽しんでる、俺を見て。いくら否定しても吹雪さんは信じない。信じてくれない。もういいです、と諦めの言葉を放ってもしつこく聞いてくる。めんどくさいなこの人。そう思っても吹雪さんの怖さはよく知っているので、口には出さない。




「じゃああれか、僕はお邪魔ってことだね」
「違いますって!俺は別に名前のこと」
「いい加減認めなって」
「吹雪さん!」




  吹雪さんがしつこいのもあれだけど、俺が素直じゃないのも事実だ。でも吹雪さんに名前が好きなんですと言ったところでどうなる。きっと吹雪さんのことだから、応援したりいろいろ協力してくれるんだろうけど。吹雪さんの見た目が見た目だけに、名前が吹雪さんのことを好きになる可能性も無くはないので怖い。ただそれだけ。




「とってきたよー。って、どうしたの?顔赤いよ?」




  手にとってきたタオルを持った名前が俺の前に現れる。顔が赤いと指摘されて、何でもないと答えるしかなかった。また吹雪さんはニヤニヤした顔をしている。そろそろその顔はやめてくれませんか。




「ねぇ、名前。名前の好きなタイプってどんなの?」
「っ!?吹雪さん!?」
「どうしたんですか?いきなり…」
「いいから答えてよ、ほら」
「…そうですねー、」




  考え込む名前をよそに、思いっきり吹雪さんを睨んでやった。まぁまぁ、といった動作をして名前に目を向ける吹雪さん。後で何か奢ってもらおう。




「一生懸命な人ですかね」
「一生懸命?」
「はい。頑張ってる人ってかっこいいと思います。」
「なるほどね、」




  ああ、よかった。まだ俺にも可能性がある内容でよかった。本当によかった。安緒のため息をついたら、チラッと吹雪さんが俺を見てきた。何ですかと言う代わりに目を合わせると、うんうんと首を縦にふった。




「よかったね雪村。これはいけるよ」
「っ、なっ、なななな何言ってるんですか!」
「雪村くんがどうかしたんですか?」
「ううん、こっちの話し。気にしないで」




  ハテナマークを浮かべた名前に本当に気にしないでと釘を打っておいた。すると名前が笑う。また顔真っ赤だよ、と。今日だけで何回赤くなったことか。それもこれも吹雪さんのせいだと恨めば、当の本人は知らん顔をする。




「ほら、練習再開するよ。少しでも近づくためにね」
「近づくって何に?」
「な、何でもない!何でもないから本当に!」




  吹雪さんにも困ったものだと思いながらグランドへ出た。でも名前にちょっとでも好感を持ってもらいたいと思い、今までよりもさらに気合を入れて練習をする俺は、きっと単純。









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吹雪はお節介なイメージ


20120303


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