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  くちゅくちゅ、さっきから士郎くんはずっとイチゴ味のガムを噛んでいる。味がなくなって包み紙に包んでも、またポケットから新しいガムを出しては口の中に入れる。その動作を今日は何回繰り返しただろうか。イチゴ味のガムがマイブームなのかなーって横目で士郎くんを見ながら考えたけど、どうやら違うらしい。だって「そんなに美味しいの?そのガム」と指をさしながら言えば、「まぁ普通においしいかな」と返ってきたのだから。凝視している私に気付いたのか、士郎くんが「名前ちゃんほしいの?」と聞いてきた。




「え、くれるの?」
「もちろん。名前ちゃんイチゴ好きだしね、」
「うん、大好き。ありがとう!」




  差しだされたガムをもらっては、すぐに口の中に入れた。口の中に広がる甘酸っぱい味。甘いなぁ、おいしい。そんな私を見て士郎くんは満足そうに笑う。「名前ちゃん幸せそう」だって幸せだもの。




「でもよかったの?士郎くん気に入ってたぽかったのに」
「うん、いいんだよ」
「そっか、ありがとね」
「それに二人での方が効果あるかなーと思って」




  え、何が?と言葉を発する前に視界が士郎くんでうまった。さらに唇に柔らかいものが当たった。と思ったら、微かにしてたイチゴの味が少し濃くなり、ふわっとイチゴの匂いがした。ぱちぱち、と数回瞬きをすれば目の前にはニコニコ微笑む士郎くん。だんだん顔に熱がたまる。「おいしかった?」……え。




「し、しししし士郎くん!」
「名前ちゃんイチゴ好きだから、どうかなって」
「好きだけどこれはっ」
「僕はおいしかったけどなー」




  そう言って再びガムを噛み始めた士郎くんに、「ばか」と一言言ったら「そうかもね」だけ返ってくる。口喧嘩はかなわないって前から分かっていた私は、睨むように士郎くんを見たあと同じくガムを噛んだ。広がるイチゴ味からさっきのこと思い出し、また顔が赤くなった。









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ガムって2個噛めば味濃くなるもんなの?


20120122



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テーマ「人外ファンタジー」
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