空がオレンジ色に染まった中、隣にいる修也くんと他愛もない話しをしながら帰宅路を歩く。「今日も練習おつかれさま」そう言うと優しく微笑んで返事をくれる。こんな修也くんを見れるのも彼女の特権なんだなぁ、と改めて幸せを感じていると「ニヤけてるぞ」と言われた。わ、一人でニヤついてるなんて気持ち悪い奴じゃん。
「や、幸せだなーって思って」
「急だな」
「あたし、世界中の人達の中でもかなり幸せな方だと思う」
「嬉しいこと言ってくれるな」
俺も幸せだ、という修也くんの声に口が緩むのが分かった。なでなで、と頭を撫でられた。再びニヤついた顔を隠すように、右手で口をおさえる。ふいに、隣から聞こえていた足音が止まった。マネするように足を止め、数歩後ろの修也くんを見る。
「修也くん?」
「……」
「どうしたの?」
「名前、」
さっきまでとは違う、真剣な声。真っ直ぐな瞳はそらすことが出来ず、ただ修也くんを見つめた。「目をつむってくれ」言われるがままにそうすると、私へと修也くんが近づいてきた。途端に、さっき私の頭を撫でた手で左手を掴まれた。びっくりしておもわず目を開けそうになったが、修也くんに言われたことを思い出し我慢した。そして指に金属のような冷たさが。「開けていいぞ」その言葉と同時に目を開けると、指輪がはめられていた。
「…左手の薬指、」
「……」
恥ずかしいのか修也くんは俯いている。指輪がしてある指を、確かめるように触った。「修也、くん」と名前を呼ぶと、顔をあげた修也くんが口を開いた。
「…今はそんなものしかあげれないけど、」
「……」
「いつか、何年か後にはもっと凄いのをはめるから」
「修也くん…」
「その指輪はその時までの予約、」
そう言った修也くんの顔は、夕日に負けないくらい真っ赤だった。自然に流れてきた私の涙を、修也くんがごしごしと制服の袖でふく。「泣くなよ、」「だって修也くんがっ…」私、こんなに幸せでいいのかな。と修也くんに聞くと、これからもっと幸せに俺がする、なんて言うからもっと涙が溢れてきた。
---------------
きみの未来を下さい
20120121