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  空は憎たらしいくらい綺麗な青い空だった。俺が今生きているこの時代も、この空のように綺麗なものだったらよかったのに。そしたらきっと、きっとこんな決断をしなくて済んだのに。そんなことを思っても、戻ることは出来ないって解らないほど俺はもう子供じゃない。決めたんだ、俺は。




「修也?」
「…名前、」
「どうしたの?いきなり呼び出したりして…」




  俺の名前を呼ぶ声。俺を見つめる目。全てが俺にとって愛しいものだった。でも、俺はその全てを失わなければならない。前へ進むために。
  もし俺がついてきてくれ、なんて言ったらきっと名前はそばにいてくれるだろう。支えてくれるだろう。名前は優しいから。だけど、それは名前の人生を奪うことになってしまう。自分を犠牲にして好きな人の幸せを願う、そんなかっこいいことは俺には出来ない。出来ないけど、自分のために好きな人が苦しむのは絶対に嫌だ。だから俺は、この言葉を言おう。




「名前、」
「…しゅう、や?」
「別れよう」




  その言葉と同時に、俺は名前に背中を向けて歩きだした。もう名前を見ることはないのだろう、きっと。あの笑顔も、何もかも。これでいいんだ、と自分に暗示をかけるように心の中でそうつぶやいた。それでも、別れを告げられた名前の顔が涙で濡れてますように、と思ってしまう俺は弱い人間なんだろう。














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最後に見た顔が、泣き顔なんて悲しいものは嫌だから


20120115



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