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「ふられちゃった」




  悲しい笑顔で今にも泣きだしそうな彼女は、夕日に照らされていた。苗字は今日、ずっと想いを寄せていた人に気持ちを伝えた。相談相手だった俺は、苗字なら大丈夫だよ、なんて無責任なこといって、偽善者ぶっていた。苗字が好きな人が俺ならって、何回考えただろう。応援するフリをして、どこかで俺は苗字が冒頭のセリフを言うのを願ってたんだ。好きな人の幸せを願えない俺は、きっと最低なんだろう。




「苗字は、頑張ったよ」




  ほら、また俺はいい人になりきるんだ。少しでも好感を持ってほしくて。そんなことしても意味のないことに気付け、俺。思えば苗字は俺に笑顔は向けてくれたことがあっても、心を向けてくれたことはないじゃないか。「ありがとう。基山くんは、優しいね」違う。優しくなんかない。苗字のことをふったあいつよりも、俺の方が最低なんだ。




「ごめん、基山くん…」
「……」
「…少しだけ、泣いていい?」
「…苗字、」




  俺が名前を呼んだ瞬間に、苗字が俺の胸に顔をうめてもたれかかってきた。やめて、俺をこれ以上揺さぶらないで、と思ったのに俺の手は反対に苗字の頭を撫でた。答えるように苗字は俺の二の腕をそっと掴む。




「ごめんね…」
「…いいよ、」
「私、基山くんみたいな人を好きになればよかった…」




  胸がきりきりと痛む。まるでナイフで刺されたみたいだ。冗談って分かってるのに、苗字は俺のこと友達としか思ってないのに。ねぇ、気付いて。気付いて苗字。俺は、俺は苗字が……。自分が傷つきたくないだけで、好きな人に気持ちを伝えれない俺に罰を与えますか、神様。









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両思いってすごい確率


20120105


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テーマ「人外ファンタジー」
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