セカンドミーツ | ナノ

「て、転校してきた雷門名前です。よろしくお願いします!」
「おう!よろしくな、名前!」




初代雷門中サッカー部の面々に囲まれて、少し緊張しちゃうなと心臓をドキドキさしていたらお父さんこと円堂守が握手してきた。昔から明るい性格だったんだなぁ。他の部員からも口々によろしくと言われる。時々家に来る人達もいるから、なんだか変な感じだ。うわぁ豪炎寺さん昔から超かっこいい!鬼道さんも相変わらず個性的だな。「夏未さんの親戚なんですよね!確かに似てますね!」この人は春奈さんだ。似てるのは当たり前だ。なんてったって親子なんだから。そんな事は当然言えないから、私は笑ってそうかな?と返す。「前の学校でもマネージャーを?」そう聞いてくる鬼道さんに、はいと返事する。それに付け加えて、サッカー好きなんですと言えばまん丸の目をキラキラに輝かせてお父さんは嬉しそうにする。




「サッカー好きなら大歓迎だぜ!」
「あ、ありがとう!えっ円堂くん。」




自分の苗字を呼ぶのは変な感じがした。一通り挨拶が終われば、みんなグランドに歩いていく。私はというと秋さんに連れられドリンクを作りに。「名前ちゃんって呼んでもいい?」「うん!全然いいよ、秋さん」「秋さん?」「あっいや…、あ、秋ちゃん!」そう呼んでとニッコリ笑う秋ちゃん。円堂くんや夏未ちゃんのことも、お父さんやお母さんって呼ばないように日頃から意識しなくちゃ。どこから来たの?と問う秋ちゃんに内心焦る。未来から、何て答えたら一気に変人だしていうか大問題だし。いや、超次元なこの世の中だからオッケーなのかなと考えながら、適当にはぐらかす。
ドリンクを作り終えたらグランドに戻った。みんな一生懸命サッカーしてるなぁとボーッと眺めていたら円堂くんがゴットハンドをくりだしていた。あれが円堂守の最初の必殺技と胸が高鳴る。中学生の円堂守のゴットハンドが生で見れるなんて…!過去に来ちゃって大変なことばっかりだけど、絶対に見れない光景をこうして見れるんだから悪いことばっかりじゃないな。




「名前さんキャプテンばっかり見てますねー!」
「何か見入っちゃうなと思って…」
「どうします木野さん夏未さん!新しいライバルかもですよ!」
「ちょっと音無さん!」




怒る夏未ちゃんとは他所に動きが止まる私。えっ、今秋ちゃんの名前も言ったよね?「秋ちゃ…、二人とも円堂くんのこと好きなの?」そう言えば顔を紅く染める二人。様子を見る限りお互い好きなことは分かってそうだ。じゃあ二人は中学の時から争いみたいな感じだったの?冷や汗をかきながらそんな事を考えていると、春奈ちゃんが覗きこんできた。「どうかしました?」「あっううん!何でもないよ!」お父さんすっごいモテモテだったんだ…。それでお父さんはお母さんを選んだんだ。あれ、ちょっと待って。もしお父さんが秋さんを選んでいたら私は生まれなかったんだ。……それって、もし私がいるこの過去でお父さんと秋さんが付き合うことになったら、私の存在はどうなるのだろう。




「名前?どうしたの黙りこんで。」
「夏未ちゃん…」
「……?」




パラレルワールドが実際にあるのだったら、私がここに来てしまった時点で未来は変わっているのかも知れない。心配そうな目で見てくるお母さんと静かに目を合わす。遠くでお父さんの元気な声が頭に響いた。




絶対に未来を変えてしまってはいけない。とても自己中だけれど、円堂くんと付き合うのは夏未ちゃんじゃないといけないんだ。秋ちゃんには悪いけれど、絶対に二人をくっつけるんだ。と、私は固く決意をした。





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テーマ「人外ファンタジー」
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