セカンドミーツ | ナノ

「ここよ、私の家。上がって」




豪華な門をくぐり抜け、おじゃましますと家の中に入ればお母さんは私の顔をジッとみてくる。何と問えば、最初に来た人は家見たらびっくりするから…と。「もう一度言うけど、私はあなたの娘!この家には何回も来たことあるよ。未来でだけど…」そう言えば、信じられないとぽつりと呟く。確かに信じ難い話しだとは思うけれど、お母さんの助けがなければ私はここで死んでしまうのだ。そうすれば未来で私の存在はどうなるのだろう。死体もこっみにあるわけだから、見つからずにお父さんとお母さんは必死で私を探し続けるのだろうか。背筋がゾッとする。あんまり考えないでおこう。タイムスリップした詳しい経緯を話したら、お母さんは頭を抱えだした。「それで、この先どうするの?」「行く当てもないし、どうすれば帰れるかも分からないの…」「未来にはタイムマシーンなんてないの?」「ないからこんなに困ってるの…」涙目になりながら訴えかけると、お母さんは溜息をはいた。未来と言っても100年後とかじゃないのだ。ここよりも少し発達しただけと考えてもらいたい。




「車に引かれてここに来たんなら、もう一度同じ目に会ったらいいんじゃないかしら?」
「実の娘に死ねと?!」




冗談よ冗談。と苦笑いするお母さんに少し呆れる。いくら未来に戻るためでも、そんな恐ろしいことを実行する勇気は生憎持ち合わせてはいない。二人で一生懸命何とか戻れる方法を考えるが、当然出てくる訳がない。「……とりあえずここに住みなさいよ」と言ったお母さんが天使に見えた。大好きと飛びつけば少し頬を赤らめて照れている様子。そういえばお母さん、いつも私が抱きつけば照れてたなぁ。変わらないなぁ。「ていうか学校はどうしたら…」「私は理事長の娘よ?まかせなさい」「お母さま〜〜!!」両手を合わせて拝むようにしていたら、お母さんが不服そうな顔で私を見た。




「お母さんっていうの他の人が聞けばおかしいだろうから、変えてくれないかしら?」
「あっ、言われてみればそうだよね。じゃあ……夏未様?」
「それじゃ家来じゃない」
「夏ママ」
「問題解決してないわよ」
「あ!なつみん!」
「何よその、どうだ!っていう顔」
「じゃあもう夏未ちゃんでいいや〜。呼び捨てもなんかあれだし。」
「夏未ちゃん…」




どことなく嬉しそうなお母さ……夏未ちゃんは私のことを何と呼べばいいか尋ねてきた。「普通に名前って呼んでよ。」「名前?」「うわぁなんだろう何か懐かしい」落ち着くなともう一回呼んでとお願いしてみる。名前。もう一回。名前。もういっ「いい加減にしなさい!」額をチョップされた。痛いとヒリヒリする額を押さえると自業自得よとそっぽ向かれた。ほんとに昔から変わらないんだなぁ。




翌日、私は雷門中に再びやってきた。理事長の娘の権限で本来存在するはずのない私も楽々裏口入学☆クラスは夏未ちゃんと一緒。この方がいろいろと便利だし、助けられるからだそうだ。ありがたい。学校のみんなには同じ家に住んでいる訳だし、親戚ということにしている。つまり私の名前は雷門名前。何かお父さんとお母さんが離婚したみたいで、あんまりいい気分とは言えなかった。同じクラスに雷門が二人いるなんて、果たして有りなんだろうか。さすがは裏口入学。簡単な挨拶を終えた後、休み時間になると私の周りには人が群がる。その様子をみて自分の席から心配そうに見ている夏未ちゃん。いろいろ質問されたけど、まぁ大半は夏未ちゃん関係だ。「確かにちょっと雷門さんに似てるかも。さすが親戚だね!」クラスの子にこんな事を言われた。そりゃあ親子だもんと心の中では返事をしとく。




「部活とかどうするの?やっぱりサッカー部のマネージャー?」
「あっ、部活か…。どうしよう」




実を言うと私は未来でサッカー部マネージャーをしている。やっぱり親の影響とはすごいもので、私はサッカーが好きだ。小さい頃はお父さんとサッカーしたりしていて、今でも時々している。サッカーとは馴染み深い。「そうだね、サッカー部のマネージャーしようかな。」必然的にお父さんとも関われる訳だし。せっかく過去に来たんだ。悩んだり焦ったりするだけじゃなく、楽しめる事は楽しんでおこう。遠くにいた夏未ちゃんに目をやれば、さっきよりもさらに心配そうな顔して見ている。親子三人で同じ部活なんて最高じゃんという意味を込めてウインクすれば、右手をシッシッとして払われた。うちのサッカー部レベル高いから大変だよと忠告を受けたけど、舐めてもらっちゃ困る。私の時代の雷門はサッカー少年の憧れになっているんだ。そこですでに鍛えられているんだ。何より中学生時代のお父さんのサッカーを見ることが出来るんだ。こんな素敵なことを逃すわけにはいかない。




サッカーにこれだけワクワク出来るんのは、やっぱり円堂守の血を引いてるからなのかなと、ふと思った。





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テーマ「人外ファンタジー」
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