小説 | ナノ










くだらないなぁ。と教室の角にいるいちゃいちゃいちゃいちゃしているカップルを見てそう思う。違う方向からは好きな人があーだこーだとか、こんなことがあって嬉しかっただのという話が聞こえてきて、より一層哀れに思えてくる。こんな中学二年生でした恋愛なんて、いつかは別れるんだし意味ないのに。こんな考えをしている私は、もちろん友達からは冷めてるだのいろいろと文句は言われるけど、これが私の考えをなんだから仕方がない。




「だーかーら!ずっとそんなのだったら結婚できないって。」
「いいもん。男子苦手だし。」




今日も変わらずに非難してくる友達に、私も変わらず真顔で返す。自分でもさめてるなぁとは思うけれども、そんな無駄なことに費やす時間はないのだ。



















「……雨。」




雨空を見上げてぽつりと呟いた。はぁと一つため息をこぼす。そういえば今日は寝坊しちゃって慌てて家を飛び出したから天気予報を見てなかったんだ。周りの人が傘を広げて校舎を出て行く中、私はじーっと空とにらめっこをしていた。




「苗字?帰らないのか?」
「……風丸くん。」




声が聞こえてきた方を見れば、そこには同じクラスの風丸くん。クラスで一番人気の男の子だ。「傘忘れちゃって」正直にそう言うと風丸くんから出た言葉は、意外、というものだった。私だって人間なんだから忘れ物くらいするよ、と返してバイバイと手を振って足を進めれば風丸くんのびっくりした声。




「えっ、そのまま帰るのか?」
「うん。だって仕方ないじゃん」




それより掴んでいるこの手を離してほしいなぁ、と思いながらいると風丸くんが俺の傘に入れよって。え?




「苗字の家まで送っていくよ」
「…えっ、いいよ。悪いし!」
「苗字ほったらかしにして俺だけ帰る方が罪悪感すごいからさ」




半ば強引に傘に入れられて、同じペースで歩いていく。ちょっと待ってこれ風丸くんのファンにみなさんに見つかったらやばくない?と冷や汗をかくが、でもここできつく断る勇気も私にはなかった。結局私はいろいろ偉そうに言っても、ただの弱い人間なのだ。




「でも今日って絶対雨降るって天気予報で言ってたのに、忘れるってほんとに意外だな苗字。」
「…今日寝坊しちゃって。だから余裕なかったの」



そう言うと風丸くんはまじまじと私を見てくる。不思議に思い、何、と一言いえば「苗字でも寝坊するんだな。なんか親近感わいた」と、風丸くん。




「私だって人間だもん。寝坊くらいするよ」
「いや〜苗字ってさ、なんか落ち着いてるっていうか大人びてるっていうか、そんなイメージ持ってたから」
「……」
「苗字?」
「…すごいね、風丸くん。私、冷めてるとか暗いとか悪いイメージばっかりだから、そんな風に思えるのってすごいと思う。」




こりゃモテるわけだなぁ。顔もいいし、性格もいいときたら、女の子が目の色を変えて風丸くんを奪いあうのも頷ける。「そんなことないよ」と苦笑いして答える謙虚な風丸くん。




「俺だってすぐ悩むし、けっこうウジウジした奴だって」
「それが本当だったら、私も親近感わくけどな〜」
「本当だって!」
「ふふ、風丸くんが必死だ」




必死になった風丸くんがおもしろくて、ちょっと笑って言うときょとんとした顔の風丸くん。もう一度、何と言いたかったけど気がつけば私の家だったからありがとうと手を振ってバイバイした。そういえば風丸くんて家どこなんだろうって疑問を持ちながら、風丸くんの後ろ姿を少し見つめていた。



















「ちょっと聞いたよ名前!」
「何を」




教室に入ったら真っ先に飛びついてきた友達に問うと、どうやら昨日風丸くんと帰ったところを見られていたらしい。これはめんどうなことになるなぁ、と今後のことを考えると今すぐ学校から出たくなった。友達はと言うと、まさか私がみたいな感じで目を輝かしていた。「そんなんじゃないから」と少しきつく言い放つ。風丸くんも、私なんかと噂になって迷惑してるだろうなぁ。




「でも名前の家と風丸くんの家真逆なのにやっぱり優しいね風丸くん!」
「えっ、逆?」
「そうだよー、風丸くん円堂とかと同じ小学校だし」



不意に心臓がドキッとなるのを感じた。え、なにこれ。なにときめいてるの私、こんなベタな展開に。だいだい風丸くんを好きになったって、他に狙ってる子はいっぱいいるし無理だって。いや、ちょっと待ってそんな話じゃないでしょ私!恋愛なんてそんなこと無駄なんだからする必要なくて、そんなことに時間を使うのなんて損なんだってば。思いとは裏腹に、頭の中にはキレイな水色の髪が浮かぶのだった。









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お久しぶり!
続編かきたいとかなんとか


20140201





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