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「…懐かしい夢、だなぁ」


わたしがこの世界に来る前の記憶。この三日後に死んじゃったんだっけ。そこらへんの記憶は曖昧だ。元気かな、泣いてないかな…自分を責めていないかな。



「全部全部わたしの所為なんだよ」



ぎゅうぎゅうと体を抱きしめて涙を堪える。あの人と約束したから、あの人の前以外では涙を流さないって約束したから。



「あーもう!!ウジウジするなんてわたしらしくなぁぁぁぁぁぁぁああああいっ!!!!」


がばっと勢いよく立ちあがると、そのままベッドに倒れこんだ。
そういえば、この夢を見た後はどう頑張ってもうまく動けないんだった…。久しぶりすぎて忘れてた…、え。



「忘れて、た?え、え何で昔は覚えてたよね…?うそ、あれあれ??いやだって昔は毎日のように見てたもん、忘れるわけがない。いつから…」


いつからわたしは、この夢を…忘れちゃいけない現実を懐かしいと思うようになったの??少なくとも小学生低学年の時は毎日、だった。高学年になるにつれて期間が空きだした。氷帝に来てからは…。


「一度も、見てない…」


なんで??わたしの、忘れちゃダメな記憶…なのに。これを、前世の記憶を持って生まれ変わったことはわたしにとって罰なのに。


「いい傾向なのか、悪い傾向なのかは言わずもがなだよね…」


たぶん、忘れた方がいいと思う。でも忘れたくないから。あの人と一緒に過ごした記憶はわたしの短い人生の中でもかなり大部分を占める記憶だし。今でもあの人が大好きな気持ちは一切ぶれずに残っている。
もし、もしも。あの人、灰崎祥吾がわたし以外の女の子のもとに行ってしまえば…怒る資格も泣く資格もないくせにみっともなく泣き喚く自信がある。


「ほんっと、情けない。逃げたのはわたし。泣く資格なんて、私にあるわけがないだろう…」


溢れそうになる涙を無理やり拭い、携帯電話を手に取る。


今日の休みは伊織に伝えていない。目が覚めてから今まで、着信とメールの通知を知らせるメロディーが部屋中に鳴り響いている。心配してくれているのは嬉しいが、正直そろそろあきらめて欲しいと思うのが本音なわけで…。


シリアス?いいえ、シリアルです


(君がいればどんなシリアスだって)
(つい笑顔に変わってしまう)



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