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「なんで、若の部屋に帰ってないわけ!?」
「え、あ、いや!あの…その!!?」


ドアを開けて玄関の方向に視線を向けると、皆さんご察しの通り宍戸亮がなぜか顔を真っ赤にさせながら突っ立っていた。
ちょっと出鼻を二回折られたおかげでついつい素で話してしまったのは気にしちゃいけない。五話目にしてわたしのキャラがブレブレなのも気にしちゃいけないんだろなぁ。


少し息がしずらい気がするのは気のせいなんかじゃ、ない。明らかに普段の学校生活じゃ近付かないくらいの距離だ。
あぁもういっそ部屋に戻ろうか?動きたいのは確かだけど、そこまでしてやりたいわけじゃないし…うんそうしようかな。


「宍戸さんっ!遅いんで迎えに来ちゃいました!!」
「ちょ、鳳そっち行くな!」
「なに慌ててんだよ日吉、なぁゆーし」
「せやなぁ」


いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!この展開は笑えない!若もっとシバくくらいの勢いで止めなさい!!大型犬はね、気を抜くと引きずられるんだよ!わたしなんて他の人より小さいから犬に散歩されてる図が簡単に作られるんだから!!!!


「あ…ぇ」


どうしよう、動けない。


「いお、ちゃ」


条件反射なのかもしれない。
初めから分かってんだよ。なんでテニス部員を見たらこんな症状が出るのかなんて、分かってんだよ…。
この人たちは漫画の世界だって、わたしが元の世界に絶対帰れないことを嫌でも理解しちゃうから。自分で捨てたはずなのに、ね。


「助けて、おにーちゃん…」


そう呟いてわたしの視界は真っ暗になった。


もしあの時素直にそう言ってたなら


(わたしはまだあの場所で)
(大好きな人たちと笑いあえていましたか)


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