3
馬鹿らしいと言われた女生徒はかぁっ、と頬を朱色に染め日吉に手をあげようとした。当たる、と目を反らし音が聞こえて来るのを待ったが、一向に音が鳴らない。目を開けると女生徒の振り上げた手を日吉が頬に当たる前に受け止めていた。


「わたしは、こんな…喋り方、だしムカつくと、は思う。けど、ね?天城院さんの意思、を…あなたたちが決める、のは間違っ…てる。手懐けた、とか…あなたたちの、方が…天城、院さんに…取り入ろうと、してるんじゃ、ないの?」



---あなたたちは、天城院さんを見てない。天城院ってブランドしか見てないんだ。


そう言った日吉の目には確かな怒りがあった。意思の弱そうな潤んだ瞳ではなく、しっかりと相手を見つめ自分の気持ちを伝えている。


「ふざけ…っ!!」
「ふざけてんのはあなたたちでしょう?あなたたちはわたしが羨ましいだけ、庶民の癖に跡部に次ぐレベルの財閥…天城院に近付けることが。少なくともあなたたちには出来っこないよ。天城院を一つのブランドとしか見てないんなら、側にいる資格は…ない。天城院伊織っていう個人を見ていないあなたたちなんかに天城院さんは振り向かない、よ。わたし、の悪口言うな、らいいけど…天城、院さんの悪口を、言うなら…容赦しない、から」


怒りを宿した瞳から一変、冷たい氷のような瞳で女生徒を睨み付ける。可愛いはずなのに、どこか恐ろしい。このままにすれば、女生徒たちは病院送りは確実だろう。
今はそんなつもりはないだろうが彼女の目が本気になれば簡単だ、と伝えていて…。女生徒はガタガタと震えながら走っていった。最初の自信満々な表情と違って目の前の小さな少女に怯えきった表情だった。



「…ぁーあ、やっちゃった。ついでに言っとく、けど覗き、見は趣味…悪いと思う、な?」
「気付いて…!?」
「女の子同士の、喧嘩がそんなに…珍し、かったの?あの、人たちは気付いて、なかった…けど、声、聞こえてたし。覗き見は、趣味…悪すぎ」


くるりとこちらを向き、無表情で淡々と告げられる言葉は俺個人に向けられたもので、場違いだが心臓が早くなった。
でも、天城院に向けられた控え目で綺麗に笑う笑顔の方が俺は好きだ。ん?好き?いやいやいや、この俺が一目惚れとかあり得ねぇよ!でも日吉を見るとドキドキと高鳴る心臓に、暑くないのに頬に熱が急激に溜まる。そして緊張して彼女の目を見ることすら、出来ない。


自覚を、してしまった。ぼんっ、と効果音が付きそうな勢いで頬が染まり心臓が破裂しそうだ。なにか喋らなくてはと思い口を開こうとすると日吉が一言。


「わたし、テニス部…嫌いだから、近付かな、いでね?」


だった。


初恋は叶わないと言いますが


(自覚して数秒後にフラれるなんて)
(激ダサ過ぎだろぉぉぉおお!!)


*<<>>
TOP
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -