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俺が日吉と出会ったのは中学の入学式。そもそも氷帝はエスカレーター式で外部受験をする人間は少ない。そんな珍しい外部受験をする人間は周りで噂になる。
まぁ、あんまりいい噂じゃなかったんだけどな。一日目で『氷姫』と呼ばれる天城院伊織を笑わせた奴だとか、天城院に取り入ろうとしているとか、寧ろ跡部景吾を好きなミーハーだとか、色々。信憑性のない噂だが、全く信じられないのが一つ。


氷帝の『氷姫』を笑わせるなんて跡部以外にいねぇよ。あの跡部でさえ三年は掛かった行為をたった一日だと?はっ、槍が降ってもあり得ねぇな。だれが広めたかは知らねぇが、信憑性のない噂を広めるなんて激ダサだぜ。


しかしその噂は三日後に真実だと分かる。


「日吉さんっ、昼食をご一緒してもよろしいでしょうか?あ、迷惑ならいいんです!私ごときに割く時間なんてありませんよね…」
「ぅ、あ…天城、院さんがいいなら、お願い…してもい、い?」
「…っ!!寧ろ良いこと尽くしですわ!有り難うございます!」


俺は自分の目を疑った。蜂蜜色の髪の小さな女に跡部に向ける恋心以上のものを向けているのだから。天城院は跡部が幼等部のころからずっと好きだったはずだ。しかもお家同士の結び付きも強く、許嫁の話もあると跡部から聞いたことがある。
跡部の前でさえ見せない柔らかな笑顔は、見るもの全てを虜にするようで。天城院に興味すらない俺でさえとくり、と心臓がなった。なら、岳人や跡部…他の天城院に惚れている奴ならどうなるんだろう?


天城院を虜にするような女は一体どれだけの容姿を持っているのだろうか?天城院よりも俺はそっちに興味がある。話し方からして、大人しい奴なのか…。それとも蜂蜜色の髪は染めたものでまさかの派手なギャルかもしれない。


横目で確認すると…。


「…は…?」


それはあまりにも衝撃だった。例えるなら(゚Д゚)←だ。有り得ない。天城院が…。


日吉の一言一言に一喜一憂したり、どう話したらいいか戸惑っていたりと普段の天城院の真逆の行動を取っていた。因みに横目で見た日吉の顔は前髪で隠れていてよく見えなかったが、かなり可愛らしい顔をしているみたいだ。控え目に笑う姿が可愛らしい。


「は…っ?なんで顔が熱いんだ?いやいやなんで心臓が痛いくらいに叩いてんだよ…!?」


日吉を見た瞬間に、天城院の比べ物にならないくらい心臓が高鳴った。どくどくと聞こえてしまうんじゃないか、と思うほど煩く鳴る。
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