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そうでもしなきゃ、不安で不安で仕方がない。いおちゃんがわたしを嫌うなんて有り得ないかも、だけど万が一そんなことがあればわたしは息も出来ないだろう。それくらい大切な存在なのに、奪おうとする君たちが悪いんだ。
あげない、いおちゃんは伊織はわたしの親友だ。駄目なの。伊織以外ならなんでもあげるから、伊織は奪わないで。伊織を奪おうとする人なんて、大嫌いだ。


「おい、岳人。女子を泣かせるなんて激ダサだぜ?」
「だってこいつが…!!」
「だってじゃねぇよ。毎回毎回同じことを天城院に言われて日吉を泣かしてんだからちったぁ学習しやがれ」


息が大分整ってきたときにストップが掛かる。向日くんのストッパーな宍戸くん。彼はわたしがテニス部を苦手としているのも、拒絶反応があることも何故か理解していてよく分からない人だ。
助けるなら早くしてくれたらいいのに。あとそんなに近付かなくてもいいじゃない。いおちゃんに「俺は岳人と違って天城院の言ってること守ってるぜ」ってアピールしたいの?
見た目は女の子らしいのに無駄に男気溢れてるんだから本当によく分からない。いおちゃんなら彼のキャラを掴めるのかも知れないけど。わたしは四天王寺派なんだよね、キャラ的に。財前くんが可愛いよね、あ、今は年下なのか。なんか嬉しい。


「もう、平気ですの?」
「ん、大丈夫…。いおちゃんが、ぎゅってしてくれたか、ら…怖く、なかったよ…!」


心配そうな顔をするいおちゃんは優しい。だから好き。気遣いの出来る女の子って素敵だよね。わたしが男の子なら惚れちゃってるかもしれない。
あ、無駄にテニス部の人とか氷帝の生徒とかにモテる理由が分かるなぁ。わたしに向ける優しい笑みは氷帝の生徒に向けられることはまずないんだけどね。


「偉いですわ詩織。ならご褒美に購買のプリンをプレゼントいたしますわ!」
「わ、嬉しい…!いおちゃ、ありが…と」


わたしだけに向ける優しい笑顔が好きだ。いおちゃんがわたしを大好きだよ、って特別なんだよ、って分かるから。いおちゃんがわたしに依存してるのは分かってる。ヤンデレさんなのは仲良くなったら分かること。
だったらわたしもそう返せばいい。この世界に落ちて初めて出来た親友。わたしはあなたを失うことが何より、怖い。家族より、テニス部に近付くことよりも…。わたしはいおちゃんを失うことが、嫌なんだ。


貴女は知らないだろうけど


(伊織を失えばきっと)
(わたしは世界を壊すだろう)


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