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その筆頭は男子テニス部部長、跡部景吾さんだが向日くんも仄かにいおちゃんに恋心を抱いている。だから、ね。


「て、天城院!!」
「詩織が嫌がるので教室内では関わるな、と毎回言っているのですが理解出来ないのですか?私は貴殿方テニス部レギュラーの専属マネージャーをさせて頂いておりますが、部活以外で貴殿方と関わるのは非常に不愉快なのを貴方様の出来の悪い脳に刻み込みなさい」
「…っ…!」


ほらね、玉砕。いおちゃんはわたしの近付いちゃ駄目な範囲を知ってるから、わたしを少し離して向日くんとお話、ううんいおちゃんの意見だけを述べる。向日くんの意見なんて聞いたことはないと思う。
わたしに向けるあの優しい笑顔とは違い、氷を思わせるような冷たい目で彼を睨むのだけれど。ピリピリした肌が痛むような空気は、苦手だ。テニス部員が二人もいる教室で、苦手な空気を出されてしまえば…涙が零れ落ちそうになる。



「い、おちゃ…!いい、よ?向日、くんだっていおちゃんのクラス、メイトなんだ…よ…?お話、したかったんじゃ、ないか、な…?」
「…っ、しお。顔色が悪いです、あまり無理をしないで下さい…心配します…」
「だ、だっていおちゃんが怒った顔見るの…やだもん。確かに、怖い、けど…いおちゃんの怒った顔みる、位なら…我慢する、よ?」



我慢するとは言っても正直かなりキツい。テニス部に近付ける距離、それは半径一メートルより離れていなくてはいけない。いおちゃんは不自然じゃない距離を計って向日くんに意見を述べていたけど、それを止めるとなれば半径一メートルのギリギリまで行ってしまう。
前髪に隠れて向日くんには見えていないだろうけど、わたしの顔色は青を通り越して土色をしている。勿論瞳はまばたきをすれば涙が零れてしまいそうなほどに溜まっている。息も、しにくい。


あからさまな拒絶反応過ぎて頭の隅っこでは、嘲笑うかのように冷めているけど。いおちゃんの立場が悪くならないために、これくらい我慢しなくちゃ…って思うの。
わたしが我慢すれば、いおちゃんはずっとわたしの側にいてくれるでしょう…?


「…っ、は…」
「詩織、大丈夫ですわ、私が側にいます。だから泣かないで…」
「ぅ、うぅっ。いおちゃ、やだ、離れないで…」


いおちゃんの好きな仕草と好きな喋り方、あとはわたしの態度とか表情。いおちゃんが誰か一人の特別にならないように繋ぎ止めるの。
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