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わたしの朝は運動から始まる。朝五時半に起きて、軽くストレッチ。それから三キロ程走る。そして古武術の稽古。勿論個人練習だ。それが終われば、シャワーで汗を流す。
そんなことをしていると時計の針は七時を指す。朝食を食べれば遅刻は確実なので母が作ってくれていた小さなお握り二つと、お弁当箱を鞄にいれ歩いて学校に向かう。


多少の距離はあるけど、校舎に最短で入れる場所はテニスコート横を通らなければならないので毎日遠回りをして校舎に入る。まだ朝練の時間なので母が作った簡易の朝食を済ませる。
それからはいおちゃんが来てくれるまで小説を読んだり、少しだけ寝たふりをしてみたりと時間を潰す。


「詩織ぃっ、おはようございます!!」
「ぁ、いおちゃん。朝練お疲れ様、おは…よう」
「相変わらず可愛らしいですわ!詩織のその言葉で今日一日幸せに過ごせます…っ!!」
「ふ、ふっ。相変わらず、はいおちゃんだ、よ?すごく、綺麗」
「はぁぁぁぁぁああっ…っ!!ありがた過ぎる言葉です、大好きですわ詩織」
「ん、わたしも…いおちゃん好き」


真っ赤な顔で挨拶をするいおちゃんは本当に可愛い。普通なやり取りじゃないかもしれないけれどわたしたちには普通過ぎるやり取りだ。
えへへと締まりのない顔で笑っていると、チャイムの鳴るギリギリに一人駆け込んできた。その瞬間、わたしは今まで浮かべていた笑顔を消し去る。


宍戸、亮。今はまだロングヘアーな見た目。テニス部員、だ。



彼を認識してしまうと朝の楽しい時間は終わってしまう。わたしの恐怖感のせいで、いおちゃんでさせまともな会話をすることが出来ないからだ。それを知っているからいおちゃんはわたしの頭を優しく、優しく撫でてくれる。
それだけでは恐怖感は拭えないが、いおちゃんがいてくれる。だから頑張れ、る。


チャイムが鳴り終わる頃にもう一人、赤い髪のおかっぱの男の子が入ってくる。「ギリギリセーフ…!」と教室中に響く声。向日、岳人。可愛らしい顔付きをしているし、人懐っこいので男女ともに友情として人気が高い男の子。


因みに…。いおちゃんは男子テニス部のレギュラー専属マネージャーで、宍戸くんとも向日くんともそれなりに仲がいい。しかもいおちゃんはかなりの美人さんだ。男子テニス部内で狙っている人は少なくはない、寧ろむかつく位多い。
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