長すぎる前髪で見えない瞳はきっと俺の心を見抜いているんだろう。

弱くて情けない、いつまで経っても前に進めない俺の本心を…。



「…っ、だって!!あいつらが成長したと言っても、まだ…まだ未熟だ!!俺が、秀吉や半兵衛…ねねの換わりに守らなくちゃ…!!」
「それはお前さん、慶二があいつらを一人前の仲間として認めてないってことだぞ??」


ガツンとハンマーで殴られたかのような衝撃を受けた。

だって、俺はあいつらの家族で…。あいつらを守るためならなんでも、やるって。


「お前さんがどう思ってどう行動するかは自由だが、お前さんの行動があいつらの成長を妨げてるとは考えんのか??あいつらはもう一人前の武士だ。お前さんが口出ししなくても、己の進むべき道を歩くさ」
「…それが不幸にしかならない道だとしても、進むのか…」
「天下統一なんてただの自己満足だ。平和という大義名分を振りかざした虐殺だ。なに正解で不正解かなんて誰一人分かっちゃいないさ」

官兵衛は視線を外さずに言う。俺は平和な時代を生きてきた過去があるから、今の時代にこんな考えを持っているやつがいるとは思わなかった。だからなのか…。秀吉たちが死んでから胸の中につっかえていた塊みたいなものがストンと無くなっていくのを感じた。


「正解、不正解かなんてわかんねぇよな。は、はははっ!官兵衛なんかに救われるなんて俺なっさけねぇや!」
「なんかとはなんだ!?小生に話したのは慶次、お前さんだろう!」
「はは、はははっ…。…っ、ぅぅぁ…っ!なぁ、官兵衛…俺たぶんあいつらを不幸にしちまうことするかもしんねぇ。ただ、あいつらに生きていてほしいって思っちまった。後ろ指さされて死にたくなって、でも俺の為に生きてほしい。惨めでも辛くても、死にたくても…っ、全然幸せじゃなくても生きていてほしい…っ!」

止めどなく流れる涙。俺は私は…。


「あいつらが大好きだから、命に代えても守りたいって思うけど。それだけじゃ足りないから、生きていてほしい。恨まれようと憎まれようと嫌われようと!…復讐なんてしちゃダメなんだ。不幸の連鎖はここで終わらせなきゃなんねぇ。家康を殺しても、きっとあいつらは笑えないんだ」
「…どうするつもりだ?お前さん一人で手出しできる問題じゃないぞ」
「だろうな。でもやらなきゃ、あいつらに笑ってほしいから。…いいじゃん。いろんな奴に恨まれ憎まれてる豊臣軍の、最凶二人組をさ…幸せにしたいって思っちゃったんだから」


泣き笑いみたいな滑稽な表情を作る。光の届かないここだからこそ、不幸の星に生まれたあり得ないお人好しの前だからこそ宣言してやる。この前田慶次様の命がけの夢を!


「俺の我儘で戦をやめさせる。復讐なんてさせない。あいつらを、俺の大事な家族の望みをぶち壊して、不幸にしてやる!最低な夢をあいつらに見せてやる!豊臣軍豊臣秀吉が左腕、前田慶次の一世一代の大勝負だ!」


にぃっ、と不敵に笑ってやる。そうだ、悩むな。俺は家族のためならなんだってできるんだ。ちっぽけな不安なんて消しちまえ。俺は、不確定分子〈イレギュラー〉なんだから!


「にひひっ、ありがと官兵衛。これからは多分こっちに顔出しできねぇけど、お前も生きてくれること祈ってるの」
「…死に急ぐなよ、慶次」
「心配されなくても、目的を達成するまでは死ぬ気はねぇよ。じゃぁな、官兵衛。…お前も家族だと思ってんだから無茶だけは止めろよ」


何か言いたげな官兵衛を残し、俺は地下炭鉱から出て行った。さぁ、これから忙しくなる。


俺はお前らの泣き顔なんて見たくはないから

(全力でこの理不尽な現状から救ってやる)
(それがお前らの幸せにつながらないとしても)


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