ぼたぼたと情けなくも流れ落ちる涙を乱暴にぬぐってから、秀吉と半兵衛の死体に目を向ける。このままここに置いておくといくら涼しくなってるからといっても、腐ってしまう。

「…形部、いるんだろ?」
「ヒッヒ…ぬしは相も変わらず不器用な生き方を選ぶナァ」
「うっせ、心読むな、ばか。…秀吉たちを運ぶ、からさ…手伝ってよ。この二人ならあの場所が一番喜ぶだろうし。幸いなことにここはあの場所からそんなに遠くないから形部に負担掛けないと思うし…」
「ふん、貴様の頼みを形部が断るわけないだろう!!先ほどから秀吉様たちを運ぶ準備をしていたのだからな」

…うちのこまじ天使なんだけど。否定する奴は許さない、切り刻んでやる。あと三成、そろそろ形部について暴露するのはやめてやれ。包帯の隙間から見える耳がかなり赤い。お前に手を出すことはないとは思うが、その代り官兵衛に被害が来ること間違いなし…なんだが。

「みっつん、そこまでにしとけー」
「誰がみっつんだ!!私の名前は三成だ!」
「うんうん知ってる知ってる、可愛い可愛い俺の息子の石田三成くんだぞー」
「…っ、死ね馬鹿が!!!」
「ははっ、まだまだ死ねねーよ。秀吉と半兵衛の分までお前らを守んなきゃなんねーしな!!…いだぁぁ!!?」
「無駄話はそれくらいにしやれ」

ごすっ、と鈍い音を鳴らし形部の水晶が後頭部に直撃した。官兵衛にじゃなかった、俺に被害がきた。しかも髪飾りのところに直撃だから羽の先が頭に思いっきり刺さった…。
え、これマジで痛い。髪だってきっと乱れた。いや、女の子じゃないから髪は命とか言わないけどな!一応ちゃんとケアしてんのよ!?


「形部の馬鹿!」

餓鬼っぽいけどべーって舌を出して三成に抱きつく。抱きつくのは片手でこと足りるから、もう片方の手で乱れてしまった髪をほどく。
鳥の羽根を模したこの髪飾りは元服した時にねねと秀吉にもらったものだ。いつもこの髪飾りのおかげで頑張ることができた。

「こんどはそっちで秀吉と半兵衛、んんでねねをよろしくな」

今から俺は自分の命に代えてもこいつ等を絶対傷つけねぇから、そっちで見守ってくれよ、そう心の中で呟いて髪飾りを握りしめて笑った。こんなこと二人に聞かれたら怒られんなぁなんて、笑っちまうよ。

「慶次、」
「んー??」






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