数分間の殺し合いを遮ったのは銀色の叫び声だった。
「…リミット、かぁ。家康、お前は俺が殺す。それまでにくたばんじゃねぇぞ?」
「ははっ、それは慶次にも言えることだろう?まぁ、今は死にたくはないから逃亡させて頂くがな。忠勝!!」
「キュイーン!」
戦国最強、本多忠勝の背に乗り逃げていった家康の代わりに泣きそうな程顔を歪めた三成が走ってきた。
瞳一杯に涙を溜め、この現実を嘘だと言うように俺にすがる…。と思ったが、ゆっくりと抱き付かれた。
「…貴様は、怪我をしていない…か?」
「ぇ、あ、あぁ…平気だぜ!三成こそ大丈夫か…?」
見えないだろうけど少し笑って頭を撫でる。すると。
「笑うな、泣きたければ泣けばいいだろう…?誰も貴様を責める奴などいない、いたとしても私が斬滅してやる」
「…泣かないよ、泣きたいのは三成の方だろ?俺は近くにいたのに、助けられたのに…。守れなかった俺は泣く資格なんて、ない」
あぁ、三成は優しいなぁ。責めてもいいのに、恨んでもいいのに…俺を突き放してくれたっていい、のに。
守れなかったって、俺が弱いから秀吉と半兵衛を見殺しにしたんだって。今だって家康を殺さず生かしてしまった。その気になれば殺すことだってできたはずなのに、それをしなかった。
前田慶次<オリジナル>に愛だの恋だの言って弱くなりたくないだとか言っておいて、あいつを否定しておいて…。
「全く成長してねぇじゃねぇか…!ねねが死んだときも格好つけた戯言をほざいて、今だって今だって!三成の方が辛いはずなのに、自分が我慢しなくちゃって!何様なんだよ前田慶次<コピー>は!!有り得ねぇ有り得ねぇ有り得ねぇ有り得ねぇ有り得ねぇ有り得ねぇ!!強くなったつもりでも、この世界に慣れたつもりでも…まだ棗が残ってんだよ…!なぁ、三成…」
「…あぁ」
「俺は、私は今此処いますか?三成を苦しめる存在になってしまったのですか?弱い私はいりませんか?私が…っ、この世界に来たのは!秀吉たちの側に居続けたことは間違いでなのですか…!?分かんない、分かんないのですよ…」
泣きたくなるくらいの優しさに浸かりたくなる。大声で泣いて助けてって叫びたくなる。弱い私はいらないのに、みんなの役にたてない私なんて…いらないのに!
人を突き放すくせに、私は一人に…独りになりたくない。だから三成に、刑部に嫌われるのが凄く怖い。利用されても殺してくれてもいいから、嫌われたくないんだ。
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