「ぁ、
あぁぁぁぁぁぁぁあ゛っ!?」
ザーザーと降り続く雨の中を傘を差さずに、無我夢中で走る。認めたくない、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
なぁ、嘘だって言って。お前らは俺を、私を独りにしないって言ったでしょう?私は独りじゃ生きていけないのですよ?だから…信じてたですのに。なんでなんでなんで!!
「ひ、でよし…はんべぇっ!!目、開けろよばか。なぁ、雨降ってんだよ。風邪引いちまうよ…、帰ろうよ」
すっかり冷たくなった二人を少しでも暖めようと、ぎゅうぎゅうに抱き締める。俺一人じゃ全然足りなくて、完全に冷えきった二人は体温を取り戻さない。
ボロボロと両目から涙が零れているのか、雨のせいかは分からないくらいに濡れているけどこの行為はやめない。やめたら二人が、俺の前から居なくなることを認めてしまうから…。
「三成も刑部も待ってんだぜ?まだまだ豊臣にはお前らが必要なんだよ、こんなとこで寝てる暇なんてあるわけねぇだろ」
なぁ、なぁっ!!
「なんで、死んじまってんだよ!!」
降り続く雨のせいで出来た水溜まりには水以外の、二人分の血液が混じっている。一目見ただけで分かるような致死量を越える血液。
ピクリとも動かない体に、冷えきった体。動かない心臓、閉じた瞳。
どこをどうとっても“死んでいる"以外の表現が見当たらなくて。でも信じたくなくて。
まだ前世の感覚が抜けてなかったのかも知れない。ねねが死んでしまった時に思ったことを時間が経ちすぎて忘れてしまっていたのかも知れない。
ここは、漫画でもアニメでもゲームでもない。やり直しなんて効かなくて、どれだけ強くたって生き返ったりなんてしない。一回死んでしまったらコンテニューなんて、ない…。
「また、守れなかった…」
嫌い嫌い、大嫌い!恨んじゃいけない。二人を守れなかったのは俺の責任でしょう…?だから、恨んじゃ駄目。
俺が弱くて仕方がないから守れない。全部俺が悪いの、に…。
アイツを恨みそうになる。
駄目、なんだよ。俺は昔から狡くて卑怯で最低な人間だ。恨まないと言いながらしっかりと復讐する。
守れないのは弱い自分のせいなのに、相手を悪者にする。結局自分が可愛いんだよ。
自分が傷付くのが怖いだけ。いくら殺しても、自分が死ぬのは…怖い。
<< >>