刑部said

われが慶次に会ったのは太閤と半兵衛殿に呼ばれ出向いた大阪城であった。やつの目は寂しさを滲ませ、すべてを拒絶する…そんな目をしておった。われはそんな目の持ち主をもう一人知っている。

ナァ、三成。慶次を見ていると成長したぬしを見ているようで心がざわつく。ぬしも近い将来こうなってしまうかもしれぬと思うと、われは安易にこの世から消えるなど到底不可能になるナァ。

本元の性格は正反対、しかしまぁ、根本的なところは寸分違わず同じなのよ。大切なものを守るためならば平気で命を投げ出してしまうほどの危うい二人を見ているわれと太閤と半兵衛殿の気持ちを考えてはくれぬのか?
マァ、常日頃暴走しがちな三成はよいのよ。あやつは適度に辛い感情を慶次に吐き出して溜め込まぬから。慶次は、一人で溜め込み酷く泣きそうな笑みで誤魔化しよる。
そのたびに太閤も半兵衛殿も三成も、無論われもどんな気持ちでいると思う?われ等は皆慶次に救われた。なのにわれ等は慶次を…一人を救うことが出来ぬ、無力感を日々味わっているのにぬしは本当に。

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「まっこと、本物の阿呆ではないか」

ぽかぽかと日当たりの良い縁側に三成を膝に乗せて眠る男に、ぽつりと呟く。
他人が近付けば刹那で飛び起きるこの男は、われが近付いても起きることはない。それほど信頼されているということを喜ぶべきか。

「ヒッヒ、よう寝ておる。…ナァ慶次、われはぬしに救われた。ならばわれもぬしを救うことが出来ないのは、違うのか?ぬしが拒否をしても、この命が続く限り守ることが出来るのではないのか?」

業病に侵されたこの身体がいつまでもつか、分からぬが。それを言うとぬしは怒るが、われはぬしを守りたいのよ。

病にかかってから初めて抱き上げられた、

(ぬしにとっては些細なこと)
(われにとっては病にかかってからの初めての温もりよ、ヌクモリ)


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