お茶を各自の前に置き、自分が食べる分の団子を取る。あんまり甘いものは好きじゃないから各一本ずつ。

「…これは、きさまがつくったのか…?」
「そうだけど、悪い?俺は半兵衛に言われて作っただけ、だから食いたくなかったら食わなくていいんじゃね?ちなみに秀吉と半兵衛の食事は俺が用意してるし…多分お前らの食事は俺が用意しなくちゃいけないと思うんでそこんところよろしく」


全く俺は女中じゃないんだぞ、と半兵衛を睨み付けるも真っ黒な笑みで返された。ちなみに秀吉は凄く申し訳なさそうに苦笑い。
そうだよな、秀吉くん。俺が料理できるってバラしたの秀吉だもんな!

「うん、相変わらず美味しいね。慶次くんの作った甘味を食べたら他のものは食べられなくなるよ」
「まつ殿のお墨付きだからな…」

嬉しくないやいっ!!

「ヒッヒッ、ぬしはまっこと面白き人間よの」

白黒反転した瞳を嬉しそうに歪めながら、団子を口にする紀之介。ゆっくりと咀嚼してから、佐吉に食わせていた。
ちょ、噎せ込んでるから!明らかにわざとだろ!?

「ぅぐっ!き、紀之介なにを…!?」
「こうでもせねばぬしは前田の作ったものを食わぬだろう?なかなか美味な甘味だからなァ」

ニタニタと子どもらしくない笑顔で笑う紀之介は、なぜか俺に気を使ってくれたらしい。

佐吉にも食して貰いたかったのよ、されど迷惑であったか…、われは悲しいカナシイ、などと俯いて呟く紀之介は微かに半兵衛と同じ香りがした。
しかし、美味いと思われたんだ。まぁ、餓鬼には渋すぎるお茶だからそれには顔を嫌そうに歪めていたが。

「ち、違う!わたしは食したくないわけでは…!」
「ならば前田に感想をいえばよかろ。われが無理矢理食わしただけなら前田もよい気分でもないだろうナァ」
「なっ…!それは、あのその…っ!!」


こいつら二人の関係性が見えてきた。紀之介が佐吉をコントロールしてんだな、それも佐吉が気付かないように…。そして慌てる佐吉を見て楽しむ、と。紀之介性格わるっ!

「別に感想なんていらねぇよ、それより半兵衛もういいだろ?流石に一日鍛練しないのは許せないんでな」

ぱくりと最後の一つの団子を食べ、お茶で口の中をスッキリさせる。
あー、夕食なにしようかな。今日は甘味作り頑張ったんだし少しくらい楽しても文句は言われないだろう、うん簡単なものにしよう。
秀吉の私室から出ながらそんなことを考える。これもきっと秀吉と半兵衛なりの気の使い方だから、無下には出来ないんだよなぁ。ねねが死んじまってどうしても出来てしまう一人の時間。俺はそれが大嫌いで、だから秀吉提案が料理をしろ…と。料理は嫌いじゃない、むしろ大好きだからありがたい提案だったんだよな、うん。

てくてくと鍛練場まで歩いていれば、背中に鈍い衝撃。振り向こうと思ってもがっちり捕まれてるから無理だ。どうしようか?なんて考えていれば「う、美味かった…っ」と蚊の鳴いたような声で呟かれた。

「…どーいたしまして」

お互い照れて、気まずくなって逃げた佐吉を追い掛けることもせず一人立ちすくむ。あぁ、どうしよう…。


逃げた銀色が無性にかわいくて…

(ねねが死んでから)
(初めて声をあげて笑った)

To Be Continue…?


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