性格が悪いと自負する俺だけど半兵衛には負ける、アイツ腹黒すぎんだよ。

無言の圧力に堪えきれなくなった俺は嫌々ながら、了解した。
そんな俺の両隣にいる餓鬼、銀髪が佐吉で白黒は紀之介と言うらしい。

佐吉は最初から態度で分かっていたが、秀吉と半兵衛以外に頭を下げる気は無いようで…先程から鬱陶しいくらいの嫌悪感たっぷりの視線を寄越しやがる。うざってぇな、おい。
紀之介は、半兵衛と同じように訳のわからない視線を寄越す。こういう餓鬼が一番危険だったりする。

「……」

スタスタ。

「……(ギロリ)」

ぽてぽて。

「……ヒッヒ」

ずぅーり、ずぅーり。


泣いていいかな?
なにが嬉しくて城内を歩き回らなくちゃいけないんだ!
しかも紀之介は足が悪いのか知れないけど、歩き方がぎこちないし。

うぅー仕方なく…仕方なくなんだからな!半兵衛怒らせると恐いんだよ、第六天魔王の比じゃないぜ?

「…おい、紀之介」

ずぅーり、ずぅーりと足を引き摺りながら歩く紀之助を片腕で抱き抱える。見た目通り軽い、つか軽すぎる。

「…っ!?なにをしやる、お前さま…われは業病であるぞ」

早ようはなさねば、ぬしに不幸がふりかかる…。

表情を強張らせながら、小さく腕の中でもがく紀之介。
業病って確か、前世で罪を犯した奴がかかる病…だったか?あー姉貴が言っていたかも知れない、が忘れた。
けど、触れるだけじゃ移るわけない…と言っていたような気がする。
まぁ、移ったらその時はその時だ。


「別に、気にしない…。つか、佐吉が移ってないなら俺に移るのは可笑しい、だろ?俺より長くお前の側に居るのに…」

ついでに、お前歩くの遅いから今日中に城内回れねぇ。俺にだって用事はあるんだ、さっさと終わらせたいんだよ…。

そう言って、抱えた体を降ろさずに歩き始める。軽いから全然苦になんねぇや、つまんね。重かったら多少の鍛練になるかもって思ってたのにな。
まぁ、紀之介を抱えたことによって佐吉の視線が鋭くなったのはご愛嬌ということで。


あらかた城内を回って暫しの休憩をとった。
俺はまだ半兵衛に言われていた(と言うより半分脅されて)用事を済ませるべく厨に向かう。
あぁ、めんどくさい。
手を抜いてもいいが、その後にくる半兵衛の嫌味が嫌だ、あれはかなりむかつく。
言い返せないんだ、ヘタレと言うことなかれ。ヘタレはうちの愚弟だ、俺は断じてヘタレじゃない。

むにむに、ころころとカラフルな団子を山積みに作る。
今回はシンプルに三色団子とみたらし団子だ。
あんこはめんどくさい、時間があれば作るんだが…。またの機会にしようと思う。
あの二人がどれだけ食べるのかも分からないしな、うん。


完成したそれを皿に盛り付け、お盆に乗せて運ぶ。毎回毎回大量に作るもんだから、運ぶのは慣れたものだ。
頭に一つに、左右の手に二つずつ。バランスが大事なんだよ、これ本当。ミスったらパァだからね。


秀吉の部屋の前に立ち、右足で襖を開ける。行儀悪いと言わないでくれ。半兵衛は開けてくんないし、秀吉は半兵衛に止められて開けてくんないし…あの二人にも期待できないし…!なにこの苛め。


「きさまっ、秀吉様と半兵衛様の前でれいぎをわきまえぬかっ!!」
「あーあ、うっさいー。おら餓鬼ども甘味だ、さっさと食え」

バンッと適当に並べてから、秀吉の部屋に置いてある急須でお茶を煎れる。あれ、今更だけどこれ女中の仕事じゃね?ナチュラルにやってっけど、俺ただの武将だかんね? まつねえちゃんに“慶次はいつお嫁に行っても大丈夫にごさいますれば"とか言われてるけど、前世はどうであれ今はれっきとした男なんだからな!?
そう言ったことが記憶に新しいが、突っ込んだら負けだと思う。まつねえちゃんはほんの少し恐かったりするから…。


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