無音の時間が少し経って翔が何か言いたそうにこちらを見てきた。

「なに??食べる気になったの」
「食欲ないゆーとるやろ。……、あんな今から言うことは全部、ぜんぶお伽噺や思て聞いてくれたらええから。…頼むわ」
「翔の作り話だと思って聞いてあげる。忘れろって言うなら、すぐに忘れてあげる。だからさっさと話して寝て、胡散臭い翔に戻れ」

手厳しいな、と笑って翔は話始めた。

「ワシは、俺は昔すげー好きなやつがいて。六歳違いの幼馴染の女の子で、笑った顔がめちゃくちゃ可愛い子」
「ロリコン??あとさらっと惚気んな」
「ロリコンちゃうわ!!…んで、俺が二十四歳の時にな、その子死んだんだよ。まだ十八歳だぜ??高校卒業したら結婚しようって言ってたのに…。後悔したよ、何で手ぇ離したんだって。あの子の換わりに俺が死ねばよかったのに。周りなんか振り切って線路に降りてりゃ助けられたかもしれないのに…!!」
「………」
「今でも夢に見る。あの日は一生忘れられん」
「翔って意外に女々しいんだね」

ぎゅっと手を握りしめて涙を堪えている翔の姿は今までにないくらい弱々しい。体を動かす気力さえ今はないみたいでわたしはそのまま話続ける。

「翔、は後悔してるんだよね。でも、ちゃんと覚えてる。そんな辛い日のこと覚えておくのも辛いでしょう??わたしなら記憶から消しちゃう。辛いことは、忘れたい。翔は誰かに一生そのことを背負って生きていけ、なんて言われたの??」
「…言われてない…でも!!」
「だったら忘れればいい。それが嫌なら逃げて逃げて、いっぱい逃げて…。ちゃんと向き合えるようになってからもう一度悩めばいいと思うよ」

「わたしは祥吾が好き。たぶん翔と同じことになったら追いかける。ばらばらに死ぬんじゃなくて最期は一緒に死にたいって、思うよ。これ言ったらヤンデレ??って言われるけど、それくらい好きなんだからしょーがないでしょう??」

にこりと冗談めかした笑顔で笑う。ま、わたしは絶対祥吾より早く死んじゃうと思うけど。

「だーってさぁ、わたし。今こうやって動くのも正直しんどいんだよ??もうバスケも出来ないし、もう一回位全中優勝したかったもん。先輩といっぱい走り回りたかった。……ほら、生きてても後悔しまくりだよ!?んなの死んじゃったことを後悔するより、今をしっかり生きることの方が大事じゃない??」
「…ははっ、詩織にはかなわんなぁ」



prevnext



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -