「えっと、この道を右にまが……うー?これって道って言うの?」

『獣道……いや、道じゃないなあ』

『迷ったね』

『普通にかんがえて、その地図が森の中で活用できるわけないじゃない』

『足元、気をつけろよ』

『せまくて小さい道じゃなかったらボールからでれたのに……』


はあ、全員が一斉にため息を吐く。

刹那は肩を落として「うー、泣きたいかも」と弱音を吐く。

ざわざわと木々がこすれる音にびくりと刹那は肩を震わす。

本当なら一人でもいいから誰か出してひっつきたいのだが、何分ここは木が多く狭くて上も低い。

小柄な刹那一人でやっとだ。紫諷を出す、という手もあったが幼い彼は危険だと判断したのだ。


「あ、あの人……」


前方に人発見。

しかも少し見覚えのあるシルエットだった。

赤っぽい色の髪。たしかヒビキくんとコトネちゃんのお友達。


──シルバーくんだ。


ポツリと刹那は呟いて彼の名を呼んだ。

刹那の呟きが聞こえたのか、ぐるんとシルバーはこちらを向いた。

突然の反応に刹那はびくぅっと肩を跳ね上げる。


「あんた…俺のこと、呼んだか?」

「へ、あ……え、っと…迷子になってたらシルバーくんがいたから……」

「(……?俺を知ってる?)迷子って……どうしたらこの森に入ってくるようなことになるんだよ」

「近道……?」

「馬鹿か!」

「うう、ばかとか言っちゃだめなんだよ。コトネちゃんが『シルバーに馬鹿って言われたら終わりよねー』って言うくらいだもん!」

「(コトネ…?!)扱い酷いな!!」


刹那の反応を見ながら話を合わせるシルバー。

そこで彼…否、彼女は刹那のあげた『コトネ』の発言に気付いた。

目の前にいる少女は、自分とはまた違ったタイプだが、世界の異端者。

そして、彼女がいる世界は自分がいる『漫画』ではなく『ゲーム』のほうの世界。


(つまり、シルバーはシルバーでも違うってことか……)


結論がでて、ようやく納得した。

なぜ彼女は親しそうに話しかけてくるのか、どうして自分が彼女のことを知らないのか。


「(それならあまり関わらないほうがいいな)じゃあ、俺急いでるから」

「あ、うん……ひきとめて、ごめん…ね」


謝る刹那に背を向けてシルバーは歩こうとした。

が、くいっとなにかに引っ張られる感覚がしてとどまった。


「……なに?」

「え、あ、う……」


シルバーの服の裾を引っ張っていたのは刹那だった。

問うてみれば返事はなく、目に涙をためて小刻みに震えている小さな少女の姿だった。

怯えている。一目瞭然だった。


「……出口まで一緒に行くか?」

「……いい、の?」

「怖いんだろ?」


こくん。縦に小さく頷いた。

それを確認してから「いくぞ」と声をかけた。

刹那はちょこちょことシルバーの後ろにつく。


……このとき、刹那の手持ちたちに『良いとこどりしやがって……!!』と妬まれていたことを、シルバーは知らない。



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