届かないなら、走ればいい。走っても届かないなら、叫べばいい。そうしたらきっと、京平先輩は私の手を引いて一緒に進んでくれる。
その考えは京平に対しての甘えであり、京平を妨げているものかもしれないけど、それでも彼女はそうするのだろう。彼を1人にすることこそ、してはいけないのだ。決して笹川京平は強い人間じゃないのだから。
『…ふふ、』
「?どうしましたか」
『いえ、何でもありませんよ?』
「…明らかに嘘っぽいですね」
私は、私達はきっと不安定で不完全。
だからこうして手を取り合ってるのは、とてもバランスの良いことかもしれない。
1人で生きれない人間だからこそ、2人で。そして京子や涼も居て、4人で。沢田達も居て、沢山に。端から見れば裏社会にいるのに馴れ合ってるなんて、滑稽かもしれない。マフィアを舐めてると思われるかもしれない。
それでも良い。今は、まだ染まり切れてない今は、少しだけこのぬるま湯に居させて欲しい。
「ほら、言って下さい。気になります」
『えー?』
「…早くしないとここで凄いことします」
『わかりましたよ…』
一体何をするつもりなんだろうか。
『京平先輩と手を繋ぐと、とても幸せだなあって思ったんです』
これからきっと、沢山の悲劇に出会い、沢山沢山辛い思いを味わう。それはこの世界で生きるには仕方のないことだってわかってる。だからって、感情だけは捨てたくない。私は他人に甘いから、自分にも甘いのだ。これは、甘い私の苦い我が儘。
繋がれた温もりを離したくないっていう、…子供じみた独占欲。
「、今日は随分と、恥ずかしいことを言うんですね…」
『いつもの仕返しです』
「…全く」
ギュウッと更に強く繋がれた手。
急ぎ足で進んでいくので##NAME1##からは京平の後ろ姿しか見えないけれど、確かに彼の耳は真っ赤だった。
結局、自分達は性格が正反対だろうと、似た者同士。
「…帰りましょう、##NAME1##」
『はい、京平先輩…』
一番甘いのは、お互いのことに関してだから―――…
眩しい背中に
(薄い笑顔を向けて)
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