「あの、もうここらへんでいいよ?足も痛くないし……」
「そうか?」
道が広くなり、木々も減ってきたところを見て、刹那はシルバーに声をかける。
あれから二人はこみいった話をするわけでもなく、ポケモンのことを中心の雑談をして進んでいった。
自分が何者だとかそういう深入りはせず、ただ単純に自分のポケモン自慢をしていた。
ちなみに心愛はシルバーに謝ってボールの中に戻っていた。
「シルバーちゃん。ありがとう」
「どいうたしまして。……あと、できればちゃん付けやめてほしいんだけど」
「どうして?」
「……やっぱいい」
?を浮かべてきょとんとしている刹那を見てシルバーは諦めた。
道中で彼女が驚くほど無知だということが分かった。
だから理由を説明するのにも一苦労しそうだから。
「あ、そうだ!」
刹那は突然声をあげた。
それからがさごそと鞄のポケットをあさりだした。
「これ、あげる!」
「四つ葉のクローバー?」
「あのね、ここの森で迷ってるときにね、見つけたの。よつばのくろーばーって幸せを運ぶんでしょう?氷華ちゃんが教えてくれたの。
シルバーちゃんにも幸せが訪れますように!」
「だったら刹那が持っていたらどうだ?」
笑顔でクローバーを渡す刹那にシルバーは言う。
それを聞いて刹那は少し考える表情を浮かべる。
でも、それは本当に少しの時間だった。
考えたかと思えば、にぱっと笑みを浮かべて嬉しそうに刹那は言った。
「だって私はもうたくさん幸せだよ。みんなとね、笑いあって旅をしてるから。
だからね、このよつばのくろーばーはシルバーちゃんに受け取ってほしいの」
何を思っての行動かは分からない。
ただ、なんとなくとった行動なのかもしれない。
シルバーは差し出されたクローバーを受け取って「ありがとな」と言った。
『ほのぼのしてるときに悪いけど……刹那。時間、わりとないわよ』
「はっ!そうだ、早くいかないと心愛ちゃんの好きなでぱーとの安売り?が終わっちゃう!」
(あのイーブイは主婦か!……デパートの発音には何も言わん)
氷華の言葉で思い出した刹那ははっとして目指していたデパートの方向へと走り出した。
シルバーはその後ろ姿を見て捻った足は大丈夫なのか、というかローファーで走ったら危ないだろ。と、はらはらする気持ちがあった。
走っていた刹那は再び何かを思い出したのか急ブレーキをかけるかのように足をとめた。
そしてくるりとシルバーのほうを向いた。
「シルバーちゃん。また会おうねっ!」
刹那にしては本当に、本当に珍しい行動だった。
出会って数時間の人間に笑顔をむけたり、たどたどしいところが少なく喋ってみたり、『また会おう』なんて言うのは。本当にレアだった。
分かることはただ一つ。
刹那はシルバーのことが怖くないということである。
よつばのくろーばー
(珍しく怯えてなかったな)
(分かんないけど……シルバーちゃんは怖くなかった!)
(あれね。男シルバーのほうはいじられ体質みたいだったしね)
(いじられキャラには怖がらない法則!)
(ひたにーちゃみたいなのには怖くない?)
(陽はツンデレ属性もあるから同じとはいえないけどな)
(うおい!?)
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