ちょっと変わった恋人関係(優花)


「急に出かけてごめんなさいでした。ちょっと考えたいことがあっていろんな人に話を聞いてもらいに行ってたんです。わたし一人だけじゃ多分解決できなかったから」
「なに、俺らじゃ頼りなかったわけ?」
「優花ちゃんが悩んでるならなんでも手伝うよ!ねぇ、俺らには言えない?」
「ううん、今なら言えるの。でもあの日ずっと頭の中ごちゃごちゃになってて、二人と離れて考えなきゃ八つ当たりしちゃいそうだったから」

ごめんね、と清さんがいれてくれた甘いココアを飲みながらまた謝る。

あの日もやもやとした衝動に耐え切れず家を出て電車に飛び乗った。向かったのは祥吾くんとテツヤくんのところ。二人に話を聞いてもらった後は先輩たちのところへ行って、その後は真さんのところ。それから大坪さんたちのところへ行ってから、両親のところへ。

たくさんの人に私の思いを伝えた。みんながみんな理解してくれているわけじゃないけど私は本気で二人のことが好きなの、って。意見が欲しかったわけじゃない。私は自分自身の覚悟を示したかっただけだった。

だから最後に両親に全部、全部話した。中学の頃の話、高校の頃の話、今の話……。私が弱くて大事な親友を亡くしてしまったこと、無茶をした私を支えてくれた二人の恋人のこと、二人とずっと一緒にいたいと思ったこと。逃げないって、絶対に諦めないって言ってしまった。

そこまで話すと二人は丸い目をさらにまん丸にして固まった。

「私はもう二人が嫌だと言っても二人を離せません。他の人に取られるなんて嫌です。世間一般なんて知らない。私が、二人を好きなんです選べないんです、選ぶ気なんてないんです。だったらずっと一緒にいれるように覚悟を決めるべきです」

きりっと言い放って仕舞えば二人はソファに項垂れる。ごめんなさい、私一度決めたらしつこいですから。

「優花ちゃんが男前なの知ってだけど、めちゃくちゃ格好いいよぉ」
「美人で可愛くて精神的イケメンってなんだそれ。つーか相変わらずぶっ飛んだ思考回路してんな……」
「もー清さん言っちゃいましょ。多分今言わないと俺らの出番なくなる」
「だな」

「こそこそどうしたんです?私まだ言い足りてないんですけど」
「ちょっと待て。その前に俺らから」
「本当は一週間前に言うつもりだったし、今となってはお休みの日に実行する予定だったけど……」
「一度しか言わねぇし、拒否とかしたら轢くからな!」
「じゃ、せーの」

「「優花(ちゃん)、結婚してください」」

「あのね、詩織ちゃんがいなくなった時支えてくれてありがとう。優花ちゃんのおかげで俺、ちゃんと笑えるようになったよ。ずっと側にいて、一緒に笑おう?それでみんなに負けないくらい幸せになろうよ」
「お前のそのぶっ飛んだ思考回路についていけんのは俺と和ぐらいだ。どうせ今回もくだんねぇことで悩んでバカやったんだと思うけど、まずはじめにこっちに相談しろっつーの。今更なに言われようがお前らを手放す気なんて俺にはサラサラねぇんだからな」

ぇ、と小さな声が漏れる。そんな私に気付いてか気付かないでか、二人はさらに続ける。

「俺たちは多分全員欠けてて、二人がいないと成り立たないんだよ。世間になに言われたって、それはもうどうしようもないものだと思う。だったら諦めちゃおうよ、ね?」
「そーそー。つーかんんな世間一般の幸せなんざ三人で付き合うって決めた時からいらねぇって思ってた。認められなくてもいい、ただお前ら二人が側にいてくれたらそれだけで幸せだから」

二人の目は真剣で、私の欲しい言葉を全部くれる。付き合いだしてからずっと悩んでいたことをいとも容易く解決してくれる。だから、好きなの。

頭が言葉を理解すればするほど瞳から溢れ出す涙を止められない。同じことを言おうとしてた。それを二人から言ってもらえて、同じ気持ちなんだってわかって嬉しいんだ。

「ねぇ、返事ちょうだい?」
「お前が泣いてんの好きじゃねぇんだよ。笑え、んで返事くれよ」
「……っ、同じ……ですよ!私だって二人がいるならそれでいいの!好きです、大好きなんです!ずっと側にいてください……っ!」


思いっきり二人に抱きついてわんわん泣く。胸の中のモヤモヤがなくなって代わりにふわふわと幸せな気持ちが広がる。

私こんなに幸せでいいのかなぁ。詩織ちゃんが守ってくれたから今の私があるけれど、それでもまだ怖いよ。幸せになんてなったらバチが当たりそう、なんて。そんな考えきっと詩織ちゃんはお見通しだよね。きっと、ぺしって私のおでこを叩いて、ばぁかって笑うの。それから少し拗ねた顔で幸せになってって、応援してくれる。私の親友はそういう人。

「報告、一緒に行きましょうね」

たくさんの人に迷惑をかけた分、たくさんのお礼を言おう。その後はたくさんたくさん、幸せになろう。笑って泣いて喧嘩して。一筋縄じゃないかないだろうけど、三人一緒ならなんでもできる気がするの。

「和くん、清さん……大好きです」
「当たり前でしょ。俺も二人が大好き!」
「二人まとめて幸せにしてやるからずっと側にいろよ」

普通じゃない恋人関係。それでも私たちにとっては幸せな関係だから。

***
優花ちゃん
→教員免許取るために勉強中。多分専門は英語、でも一通りはできるよ。割と優秀なんです。二人が好きすぎて幸せ。

二人格好いいからいつか取られちゃうかも→よし、結婚しよう→周りの許可いるよね、報告しなきゃ→あ、二人に詳細言うの忘れてた

って感じの本人としては色々考えてるけど抜けてるから周りは心配になるタイプ。

高尾ちゃん
→美容師目指して猛勉強中。いつか二人の専属美容師になりたい。

幼馴染ほど近くなくて、他人より遠くないこの関係がお気に入り。ちょっと高校時代の色々で頭が足りてない部分もあるけど、優花ちゃんがやらかすのでぱっと見常識人に見える子。

詩織の死のことはかなりトラウマになってて未だに夢で見て魘される。そんな時は二人にぎゅーってして欲しいし、なにも考えず甘やかして欲しい。

みゃーじさん
→ファッションデザイナーの卵として勉強中。将来は多分子どもから大人までリーズナブルなお値段で提供できる個人ブランド持つんだよ。たまに自社の服を売り込むためにモデル業もやる。

二人とも可愛すぎか、俺の嫁。と学生時代も仕事始めてからも言い続けている良妻家。二人は俺の嫁です異論は認めん。

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