ちょっと変わった恋人関係(優花)


「三浦さんいつも迎えに来る人って彼氏なの?」
「……そうだけどなに?」
「三浦さん可愛いから彼氏もあんなに格好いいんだねぇ。ねぇねぇ、それじゃぁさぁ……たまぁに迎えに来てる黒髪の人って彼女とかいるのかな?もしよかったら紹介してくれない?」

こういうとき、少し…いやすごく困る。清さんも彼氏だし和くんも彼氏。二人とも私のだもん。でもそれを理解してくれる人なんてほんの一握りしかいない。別に友達でもなんでもない人に理解してもらおうだなんて思ってないけど、面倒だけは避けたい。私のせいで二人に迷惑かけるのだけは嫌だから。

「……好きな人、いるよ。それに私から情報横流ししたって思われたくないからごめんね。悪いけど諦めて」
「……っ、なにその言い方!」
「冷たい言い方になったのは謝るよ。ただ私の知り合いってなかなか格好いい人多いからさ、外見だけ見て惚れる人多いんだよね。その中で女の人って少ないからやっかみ受けることも多いの。被害をできるだけ減らすためにも余計なことしたくないんだよ」


理解しなくてもいいよ、ただ関わらないでくれたら。

そう言い放って私は席を立つ。教授には悪いけど講義を受ける気分じゃない。でもサボったなんて清さんにばれたら怒られちゃうから図書室で勉強でもしてよう。

私の後ろで彼女がどんな顔してるのかなんて知らない。私の大事な人を取ろうとするなんて許せないんだから。

***
「優花ちゃんどうしたの?」
「……なんでもなぁい」
「帰ってきてからずっとこうなんだよ。和が分からねぇなら大学関係だな。どうした、虐められでもしたか?」
「私は虐めごときで凹みません。詩織ちゃん以下の愚図に何されてもなぁにも心に響かないもん」
「うわ、ブラック優花ちゃんだwwwっていうか不特定多数の女子が詩織ちゃん以下なのは分かりきってるでしょー?」

ケラケラ笑う和くんのお腹に顔を埋めて唸る。大学でのもやもやは大好きな和くんに抱き付いても、清さんに頭を撫でられても全く治らない。

多分私は今のままでいいとか言いながら不安なんだと思う。名前のない関係。いつ途切れてしまうか分からない関係。二人が私より好きな相手が出来てしまうかもしれない。そんな時私はきっと手を伸ばす勇気すらないから。

「……ちょっと頭冷やしてきます」

このままじゃダメなんだよなぁ。うんダメ。絶対二人と離れるなんて嫌。

***
「優花ちゃんが帰ってこない!」
「一応連絡は来るけど何してんだあいつ。帰ってきたら撫でる、嫌がっても撫でる」
「それご褒美っすよ!?大学にも行ってないみたいだし、どうしようこのまま帰ってこなかったら……っ」
「泣くな和。あいつはあいつなりの考えがあるみたいだけど本当高校の時からぶっ飛んだ思考回路してるよな」
「……詩織ちゃんの親友だもん、それぐらいぶっ飛んでないとついて行けないですよ。あーでも優花ちゃんって詩織ちゃん以上に無鉄砲でおバカさんだから何やってるかすげー不安なんですけど!!」

優花ちゃんが頭を冷やしてくると言って早く一週間。いや普通シャワーとかで済ますでしょ?でもそうはいかないのが優花ちゃんクオリティ。

おはようおやすみラインはしてくれるし、ご飯食べるよーなんて他愛のない写真だって送ってくれる。でも場所は教えてくれない。もう、分かったらすぐに迎えに行くのに!

「優花ちゃんのご飯食べたい、ギュってしてほしい、三人でいちゃいちゃしたいぃぃぃいいっ!」
「そろそろ優花不足で俺は死ぬわ。あ、そうだ和、前言ってた件だけどいけるか?」
「出来てますよー。今週末には渡す予定だったのに優花ちゃんいないからぁ!」
「いつでもいいように準備しとかなくちゃなんねーよな。あいつまじ神出鬼没」
「そこが魅力だと知ってても歯がゆいジレンマ」

あぅ。


そんな話をしていると玄関の開く音。あれ、鍵は閉めてるし、俺らの周りで勝手に合鍵使って入ってくるような非常識な人いないんだけど。

まさか、と思い清さんと玄関に走るとそこには一週間振りの優花ちゃんが。ふにゃりと笑って「ただいま」を言う。その笑顔が可愛くて思わず体格差も気にせず抱き付いてしまった。

「わわっ、和くんちょっと重いよ!清さん助けて!」
「うわぁぁぁぁんっ、優花ちゃん優花ちゃん優花ちゃんどこ行ってたの?俺何かしちゃった?何かしたなら謝るからどこにも行かないでぇぇぇええっ!」
「バカ優花、勝手に出て行くんじゃねぇよ!」
「うわ、清さん今この状態で頭撫でます!?わたし結構ギリギリなんですけど!って、きゃっ!」

二人で後ろと前からぎゅーぎゅー抱きしめていると優花ちゃんがバランスを崩したのか三人でそのまま床に倒れる。ぐえって清さんが潰れたけど、それがなんだかとても楽しくて俺は泣いたまんま、笑った。

よかった、優花ちゃんが帰ってきてくれて。

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -