ちょっと変わった恋人関係(優花)


詩織ちゃんがいなくなってから四年。私は大学生になった。昔詩織ちゃんが行きたいって言ってた大学。私にはレベルが高すぎて無理だって言われたけど、どうしても入りたかった。少しでも詩織ちゃんが見てた景色を見てみたかったから。

そんな私のためにたくさんの人が協力してくれて無事憧れの場所で勉強出来てる。勉強はもちろん難しいけど、それでもたくさん努力してきたから楽しい。それに……。

「優花、迎えに来たぞ」
「清さん!ごめんなさい、遅くなりました」
「いーや。うちの講義が終わったから早く来ただけだ」
「……ふふっ、こういうカップルみたいなの照れますね。清さん格好いいからみんなから見られてますよー」
「カップルですけど何か?あと見られてんのは優花が可愛いからだろ」

荒い手つきで、それでも優しく頭を撫でられる。清さん、宮地清志さんは高校の頃から付き合ってる恋人。詩織ちゃんのことで不安定だった私たちをずっと側で思っていてくれた優しい人。この人と私たちは大学入学を機に同棲を始めた。ちょっと複雑な関係だから名目上はルームシェアなんだけどね。

私と清さんの大学は電車一本分の距離しか離れていなくて時間に余裕があるときはこうして迎えに来てくれる。それが私はすごく嬉しくてラインが来たらつい機嫌が良くなってしまう。

「和くんは今日遅いですっけ?」
「あー、なんか自主練とかで飯いらねぇって言ってたな。なんならどっか食いに行くか?」
「そうですねぇ。急いで食べなきゃいけないものもありませんでしたし、それもいいかもしれませんね」
「和には土産買って帰ってやるか。優花と二人で飯食いに行ったなんて知られちゃ拗ねられる」
「私だって清さんと和くんが二人でご飯行ってたら寂しいですよ。清さんもでしょう?」
「否定はしねぇ」

和くんこと高尾和成くん。高校の同級生で彼も私の恋人。

私は清さんと和くん、二人と付き合ってる。もちろんそれは二人も同意の上でだし、二人も同性同士ではあるけど付き合ってる。これが私たちのちょっと他とは違う関係。そこまで声に出していい関係じゃないから表向きは私と清さんが恋人だけど。

私は清さんも和くんも愛してるし、二人も同じ。歪な関係だけど三人で一緒にいるのが幸せなの。たとえこれが認められない関係だとしても。

***
「っ、つっかれたぁ!ただいま!」
「おかえり和くん。お風呂わいてるよ、先入っちゃう?それともご飯一応軽くは作ってあるけど……」
「んんー、風呂入る。ご飯、お風呂は入ってから貰ってもいい?あんまり食べてなくてさー」
「そうだと思った。練習も大事だけど、まずは身体を大事にしてよね?」
「うん、ありがと優花ちゃん」

「おいこら、玄関で話すならリビング入れ。和おかえり」
「清さんただいまーっす。優花ちゃん成分補給できたし、ひとっ風呂浴びてきます。上がったら清さんもぎゅーってさせてくださいね!」
「はいはい。無理してテンション上げなくてもいいから、早く行ってこい」

へにゃりと笑う和くんは今でもまだ私たちに本当の自分を隠すことがあるけど、いつか幼馴染たちと話すときみたいに自然体になって欲しいなって思う。一番じゃなくてもいい、ただ疲れたときにちょっと休める場所になりたいだけなの。

清さんは年上だし部活でも先輩だったから比較的甘えるけど、私には甘えてくれないんだもん。女だからって遠慮されるの嫌いなんだけどなぁ。

「もっと頑張らなくちゃ」

いつか二人に頼ってもらえるような、そんな素敵な女の人になりたいなぁ。ううん、なりたいじゃなくてなる。ちゃんとそう言って言葉にしなくちゃダメだよね、詩織ちゃん。

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