最悪な出会い(優花と詩織)
10センチ以上差がある身長差なのに全然小さく見えない。寧ろわたしの方が追い詰められている小動物のようだ。
わたしは彼女が何が言いたいのか、分からない。分からないフリをしなきゃいけない。だってそうでしょう?わたしみたいなのがいるのがムカつくなら省けばいいじゃない。気にしないから、一人でいたいから…関係ないって顔でいたらいいんでしょう?
でもね、ソレはわたしにとってのじらいだから。心の奥にある触れられたくない場所だから…。
「しょ、初対面なのになんです…か!助けてくれたことには感謝しますけど…!」
「感謝なんてしてないくせに。あの子の事もあなたはどうでもよかったんでしょ?興味もない人が幾ら突っかかってこようとあなたはなにも傷付かない…。ほらだって、今だってわたしの言葉なんてあなたに一切響いてない」
わたしは可愛いものが好き。彼女だって可愛いから例外じゃない。可愛いものは愛でて愛でて甘やかしたい派のわたしだけどこれは、ちょっと…。
「だったら、だったらどうなの?なんで初対面なのにそんな事言われなくちゃいけないの?嫌いだったら無視でもなんでもすればいいじゃない。わざわざ突っかかってくるの、ホント意味わかんないし」
初めてかもしれない。こんな初対面の人に素を見せるのは。でも、だって我慢の限界なんだもん。
「思い出したよ、あなたバスケ部のレギュラーの人だよね?そんな人が暴力振るいそうになってる現場、目撃されてもいいわけ?」
「ふんっ、本性は本当に救えなかったんだね。脅しとかわたしに関係ないし。口封じの方法なんて知り尽くしてるんだからね?」
「あーやだやだ。気性が荒い女の子って可愛くたってモテないんだよ?残念でしたぁ」
「あなたと違って友達はいるし、全然残念じゃないよ?それに…あなたみたいに猫被りすぎてるわけじゃないからね」
お互いににこにこ笑う。ただ空気はブリザード級だけど。
「っていうかその短い足どけてくれないかなぁ?ちっちゃいのに無理しすぎじゃない?」
「…ちっちゃいって言わないでくれるかなぁ、デカ女さん?言われなくとももうお昼休み終わっちゃうしどけるよ」
彼女は足をゆっくりと下ろし、後ろを向く。それだけの動きのはずなのにすごく綺麗で、可愛くて。そう思うのと同時に口の悪さに、ムカついた。わたしは平均だから!
「ばいばい、または会いたくないな」
「…あなたが嫌ならわたしは会いたいね。やられっぱなしは性に合わないから」
「ふぅん?わたしに勝てるわけないけど、まっててあげる」
にんまりとチェシャ猫のように目を細めた彼女はそのまま校舎の中に入っていった。
その余裕すらわたしにはムカつくんだ(担任にバスケ部の入部届けを叩きつけるまであと二時間)
(最悪な出会い方をした女の子と親友になるまであと…)
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