最悪な出会い(優花と詩織)
いじめっ子の彼女は涙で濡れた瞳を自分の手首を掴んでいる少女に向ける。感情なんて分かんないけど、グラグラ揺れているようなそんな感じかな?
「だって、あたし…彼以外わかんないよ。ずっと一緒にいて、これからもいつまでも一緒にいれるって思ってたんだもん…」
「じゃぁ頑張りなよ。せっかくの恋愛を嫌な思い出だけで終わらしたくなくない?ね、笑ったほうがずっとかわいいよ」
いえ可愛いのはあなたです、と言いたくなるほど可愛らしい蕩けるような笑顔を浮かべる彼女は手首から手を離す。そうして空いた両手でいじめっ子の両手を掴むともう一度にっこりと笑った。
「ね、ごめんなさいってしたらいいんだよ。それでチャラにしてくれるよ…ねぇ?」
そういった彼女はさっきまでの可愛らしい表情を一変し、般若か!と突っ込みたくなる表情をわたしに向けた。
え、え…。わたしこの子が来てから一言も喋ってないし、そもそも関わったことない…よね?でも、なんかさっきから散々な言われようだった気がする。根暗とか見る目ないとか…。
ぐるぐる考えがまとまんなくて、いじめっ子の少し震えたごめんなさいに反応できなくて。ただ流れとしてこくりと頷いてみせた。
声を出さないのは普段学校で話すことはないから。入学して2ヶ月は経ってるけど、わたしは自己紹介の時しか話してない。
話が逸れたね。
わたしの頷きにいじめっ子はもう一度謝罪し、周りの女の子を引き連れて帰っていった。そうすることでこの場所にいるのはわたしと彼女の二人だけ。
会話がなくて、居心地の悪い静かな時間が流れる。逃げようか…なんて考えてしまうのも無理がないと思うんだ。
食べる気をなくしたお弁当を片付け立ち上がった時、ドンッと鈍い音が足元からした。
「…え」
「ねぇ、いつまで俯いてんの?わたし、あなたみたいなタイプって本当に嫌いなんだよね。自分が悪いんですって態度しながら心ん中では全く思ってない。多分自覚ないんたと思うけど、本当に迷惑なの」
「え…っと、あの…」
「なに、言いたい事も言えないわけ?はぁ、本当救えない根暗だね…」
なんということでしょう。彼女は立ったわたしの足の間に蹴りを入れて、所謂足ドンとやらをやってのけました。わたしが立ってみると彼女との身長差がはっきり分かります。155センチと別段高くはないと身長なわたしなのに、彼女との差は10センチ以上あります。あまりの衝撃に敬語になっちゃったよ。
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