今日は学期末の締め括りで、学園も塾も勉強はほどほどにして世話になった教室の大掃除を言われている。学園の掃除は毎日のものでそれなりに綺麗にはしてるけど、塾の教室の方が酷いのなんのって。辛気臭いし、やっぱりそこら中に悪魔がおるっちゅーのが余計にそうさせてるんやろう。何組かに別れて普段使っている教室を幾つか片付ける。俺は奥村先生に言われて一人で実験用の倉庫の片付けをしてたけどそれも早々に終わり、志摩とむむむがおるもう1つの倉庫の片付けを手伝うよう言われた。こっちの倉庫は普段誰も手を付けやんようなものらしく、奥村先生が苦笑いを浮かべてかなり汚いって言うくらいやから相当なもんを覚悟する。
新しい雑巾を数枚とそれからバケツを持って二人がいるであろう倉庫に向かう。勉強の時間を掃除に使うんはなんかアレやけど、普段使ってる場所を掃除するんも必要なことやと割り切った。それに勉強して色んな知識を得るのは嬉しい、けど、悪魔を相手にしてる部分での疲労っていうのも否定は出来るもんやない。たまにはいいか、と、目の前の目的地であるドアノブを回した。



「……」

「………」

「……な、なに……っ…」



ガタン、と床に落ちるバケツ。入っていた水は足元に大きなシミを作っていく。
掃除をしているはずの二人。志摩と、むむむ。何故か二人は、そこで必要以上に身体を密着させている。仰向けのむむむに覆い被さる志摩。二人も俺を見て固まり、むむむが顔を真っ赤にして「ち、違うから、」と必死で俺に呼び掛ける。

志摩を押し退けるように立ち上がるむむむは相変わらず真っ赤な顔で言い訳を繰り返す。何もない、とは分かっていてもそこにあった二人の姿が脳裏に焼き付く。これじゃあ俺はただの変態や!と振り払うも、ヘラヘラした志摩の様子を見ると心の奥によくわからん突っかかりを感じた。



「一体何がどうなってああなったんや」



落ち着いたむむむと志摩に俺が尋ねる。答えは、漫画によくありそうな展開そのもの。仕事中に突然切れた電球を取り替えていた志摩が使っていた脚立が壊れ、隣にいたむむむに覆い被さるかたちになった、と。確かに部屋は暗かったし、よく見れば脚立も倒れてそこにある。確かにそれは事故で、でも、胸のどこかに引っ掛かる何か。



「いやぁ災難やったなぁ」



志摩がそう言った。
俺が落としたバケツのせいで出来た水溜まりを三人で掃除する。もやもや、うやむやな感情が胸に渦巻いてまとわりつく。このグレーな気持ちの正体に俺が気付くことは、ない。


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