もう日課になっている塾。学園でわけわかんねぇ授業受けてるよりずっとやり甲斐がある塾の勉強。そりゃ雪男は厳しいし、勉強は向いてねぇから疲れることもあるしわけわかんねぇ部分も多いけど、それでも目標があるから頑張れる。
ふぁ、と欠伸をひとつ。珍しく早めに着いた塾の教室にはまだ誰もいない……わけでは、なかった。いつも志摩が座っている隣の席に1人の女子、むむむがいた。俺に気づいているとは思うが、顔を上げることなく俯いている。
こういう場合は話しかけていいのか、良くないのか…――なんて俺がそんなこと考えるわけもない。



「早ぇんだな」

「…あ、うん、奥村くんも…珍しいね」

「今日はちゃんと起きてたからな……って別にいつも寝てるわけじゃない、ってわけじゃないけど…」



なんかよくわかんねぇ言い訳に、むむむは戸惑っていた表情を少し緩めた。むむむは前の席にドカッと座った俺をじっと見つめ、そして視線を左右に揺らした。



「雪男のさ、宿題難しくなかったか?」

「あ、うん全然、わかんなかった…」

「俺昨日の夜さ、雪男が付きっきりで終わるまで寝かせてくんなくて、寝不足」

「ええ、でも教えてもらえるならいいと思うけどな」



学園でも塾でも、そう目立つ存在じゃないむむむは控え目に苦笑いを浮かべる。私宿題やってないよ、と意外な返答に驚いたのは俺だった。見せられた宿題は確かに白紙。なんか、意外でやっぱり少し驚いた。



「お前意外と不良なんだな!」

「え、ち、違うよそんなんじゃなくて!学校の宿題でいっぱいいっぱいだったんだよ」

「…学校の宿題?」

「うん、英語と数学の宿題があって。私、テストの成績良くないから提出物でカバーしなきゃいけないんだ」



そう、言われて思い出す。そういや俺も宿題、あったような。呼び出されて、出さなきゃ進級できねぇぞって…言われたような……と、気づいた頃にはもう遅い。



「そ、それって提出いつまで…?」

「今日中…」

「おおいマジか!」



突き付けられる現実に血の気が引く。普段の俺なら提出物なんて気にもしないが、今はそうはいかない。なんてったって進級がかかってんだから。入学して数ヶ月しか経ってねぇのにもう進級できねぇとか、さすがにヤバい。どうしようどうしよう、と狼狽える俺にむーはまるで天使のような言葉を掛けてくれる。



「あの、私ので良かったら写していいよ?私もまだ出してないし…」



と。ぶんぶん縦に首を振る俺に、むむむは鞄からノートを取り出して俺に差し出した。俺の鞄にノートが入っていたのを見ると、一応宿題をやる気ではいたんだとそんなことも思い出した。



「…あ、じゃあ俺のプリントも写せよ。雪男の監視付きだから自信はあるぜ!」

「あ…ありがとう」



昨日の夜にやったプリントをむむむに差し出した。俺の字で埋まったそれは塾の宿題で、授業が始まるまでの十数分、お互いがお互いのプリントを必死で写した。





放課後、
それは友達と一緒に
宿題を片付ける時間



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