さっきまで晴れ渡っていた天気は、ほんの数分経った今ではもう最悪。夕立だろうか。図書館の窓から見える外の状況には溜め息しかでない。窓に当たる雨粒も大きくて雑。下手すりゃ窓も割れそうな勢いだ。



「何してんねん」

「…雨、凄いねぇ」

「せやなぁ、これじゃ外にも出られへんわ」

「すぐ止むといいですね」



すっかり聞き慣れた京都弁に頷くと、勝呂くんたちは当然かのように私の周りに座った。隣に志摩くん、前に勝呂くん、その隣に三輪くん。塾の座りかたと同じで、少し違うのは向かい合ってるっていうところ。宿題を広げた勝呂くんと三輪くん。志摩くんは私と一緒に窓の外を眺めている。



「おいアホ二人も勉強せぇ」

「アホ二人って…そんな言い方せんでも、なぁ?」

「まぁアホには違いないし」

「…むむむさん、」



何故だか笑い出す三輪くんと志摩くん。え、私何か変なこと言った?と勝呂くんを見れば、彼も微かに笑いを堪えていた。



「わかっとんなら教科書くらい出せや」

「でも私、別に勉強しに来たわけじゃないし」

「今なら坊が教えてくれますよ」

「え、ほんとに?」

「お前にやる気があるならな」



嫌味っぽいけど内容は優しい。今日は時間を潰しに来ただけなんだけど、せっかくだったら教えてもらおうと宿題を広げる。私がやるなら、と志摩くんも同じようにそうした。
暫く真面目に勉強をしていると、豪雨の中に一瞬の光。あ、と思う間もなくそれは音になって現れる。



「ちょっ…待ってぇぇえええ!!」



ビクッとしたのは私だけのようで、二人は呆れた視線を隣の彼に向けている。私が驚いたのは雷よりも隣の彼、志摩くんの絶叫。肩をすくめて、心なしか顔色も悪い。



「え、ちょ、むむむさん怖くないん!?」

「…怖くなくはないけど、今は志摩くんの声の方が怖かった」

「気にすんな、こいつはいっつもこうや」

「怖がりですからねぇ」



特に気にする様子もない二人は話ながらも宿題を進めているらしい。私も教科書に目を向けて勝呂くんにいくつか質問をしていく、けど雷が鳴るといちいち反応して声を上げたり肩を跳ねさしたりしている志摩くんになかなか集中できない。女の子やのに何で平気なん…!っていう問い掛けに、いやだから志摩くんの方が怖いよって返すと前の二人はまた笑った。



「ちょ、無理、そっち、行ってええ?」

「別にいいけど…」

「普通逆ですよ」



三輪くんの苦笑いに、志摩くんは更にいく苦笑いで返す。離れていた椅子をピタッとくっ付けて、私と志摩くんは密着状態。そこまでしなくていいんじゃないのかな…なんて思ってたけど隣の彼は其れどころじゃないらしい。雷どころか窓を叩きつけるような雨にもビクッと肩を跳ねさせている。少しだけ雷が怖かった私も、今じゃ志摩くんのお陰で全く怖くない。



「……!!!」

「今のどっか落ちたね」

「結構近かったな」

「停電ならんで良かったです」



光ったほぼその瞬間に鳴り響いた雷鳴。少しビビったけど意外と冷静でいられた私と、同じく勝呂くんと志摩くん。隣で固まった志摩くんは私のブレザーを掴み、今にも泣き出しそうな顔でもう嫌や…と呟いた。









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志摩落ちっていうより志摩がおちた話になった。いろんな意味で。


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